はじめに

「親も歳をとってきたし、そろそろ遺言書を書いてほしい」
「兄弟姉妹がいるから、揉めないように親に決めておいてほしい」
「でも、お金の話を切り出すのは気が引ける…」

親に遺言書のことを話すのは、なかなか勇気がいるものです。
ただ、ひとつ大切なことをお伝えしておきたいのは——遺言書には「もう書けない」というタイミングがあるということです。

この記事では、遺言書を書くために必要な条件・親に書いてもらいたいと思ったときに知っておきたい3つの変化・年代別の準備の進め方・今すぐ確認したいチェックリストを、わかりやすく解説します。
親御さんと一緒に読んでいただける記事を目指しました。

STEP 1遺言書を書ける条件|「判断する力」が必要

遺言書を書くには、ただ字が書けるだけでは足りません。
「自分のしていることの意味を理解して、判断できる力」が必要です。これを判断能力と呼びます。

⚠ 判断能力がない状態で書いた遺言書は無効に

遺言書は15歳以上であれば書けます。
ただし、認知症などで判断する力がなくなってしまった状態で書いた遺言書は、後から無効と言われてしまうことがあります。

「せっかく書いたのに、結局使えなかった」——こうしたケースが意外と多いのです。

📋 公正証書遺言なら無効と言われにくい

公正証書遺言という方法を使うと、公証役場の人が本人と直接話して「判断する力があるか」を確認してくれます。
この記録が残るので、後から「あのときボケていた」と言われても無効にされにくいという良さがあります。

📝 判断能力の目安として「長谷川式認知スケール」が使われるケースがあります

医療現場で使われる認知症の検査です。
30点満点で、点数が低いほど認知症の症状が進んでいると判断されます。

20点以下:認知症の疑いがあると判断されることが多い
10点以下:遺言能力がないと判断されやすい

「親に遺言書を書いてもらいたい」と考えている場合、まだ判断能力がしっかりしているうちに動くことが大切です。

▶ 検査項目を見る(クリックで開閉)

長谷川式認知スケール(HDS-R)の9つの質問項目です。
医師や看護師などが本人に質問しながら、合計30点で評価します。

① 年齢(1点)
「お歳はいくつですか?」(2年までの誤差は正解)
② 日時の見当識(4点)
「今日は何年何月何日ですか?何曜日ですか?」(年・月・日・曜日それぞれ1点)
③ 場所の見当識(2点)
「私たちが今いるところはどこですか?」(自発的に答えられたら2点・ヒントで答えられたら1点)
④ 3つの言葉を覚える(3点)
「これから言う言葉を覚えてください」
例:桜・猫・電車(または梅・犬・自動車)
⑤ 計算(2点)
「100から7を引いてください」(93)
「それからまた7を引くと?」(86)
⑥ 数字の逆唱(2点)
「6-8-2を逆から言ってください」(2-8-6)
「3-5-2-9を逆から言ってください」(9-2-5-3)
⑦ 3つの言葉を思い出す(6点)
④で覚えた3つの言葉を思い出してもらう(自発的に答えられたら各2点・ヒントで答えられたら各1点)
⑧ 5つの物品を覚える(5点)
時計・鍵・タバコ・ペン・硬貨など5つの物を見せて、隠した後に何があったかを答えてもらう
⑨ 野菜の名前を10個言う(5点)
知っている野菜の名前をできるだけ多く挙げてもらう(10秒以内に出ないと終了・5個まで0点・6個目から1点ずつ加算)

※あくまで医療現場で使われる検査です。実際の判断は医師が行います。

STEP 2こんな変化があったら書きどき

「いつ書けばいいの?」というのはよく聞かれる質問です。
明確なタイミングはありませんが、人生の中で次のような変化があったときが書きどきです。

👨‍👩‍👧 家族構成が変わったとき
子どもや孫が生まれた・養子をとった・離婚や再婚をした・介護してくれる家族がいる・経済的に困っている家族がいる
🏠 財産の中身が変わったとき
自宅を買った・不動産を売った・株や投資信託が増えた・賃貸アパートの経営を始めた
💭 判断力に不安を感じる前
65歳・70歳という人生の節目を迎えた・家族から「将来のこと」を聞かれた

STEP 3年代別の準備の進め方

「うちの親は何歳だから、今は何をすればいいの?」という疑問もあると思います。
年代ごとに準備できることをまとめました。

50代
まだ早いと思いがちですが、ここから準備を始めるのが理想です。
生命保険の加入・生前贈与・遺言書の最初の下書きを進めましょう。
60代
遺言書の中身をしっかり練り上げるタイミングです。
家族信託(判断能力があるうちに財産管理を家族に託す仕組み)も検討できます。
相続税の概算も知っておくと安心です。
70代前半
この時期に公正証書遺言にしておくのが安心です。
遺言の内容を実現してくれる「遺言執行者」を決めておくことも大事です。
認知症発症後
遺言書も家族信託も、新しく作ることが原則できません。
このタイミングになると、できる対策は成年後見制度だけになってしまいます。

この表を見て気づくのは、準備が遅くなるほど、できることが少なくなっていくということです。
ご両親が今50代・60代なら、まだまだ選択肢はたくさんあります。

70代になっても、判断能力があれば公正証書遺言は作れます。
大事なのは「気づいたとき」に動くことです。

STEP 4こんな状態なら、今すぐ相談を

最後に、ご家族の状況をチェックしてみてください。
1つでも当てはまる場合は、専門家への相談をおすすめします。

☑ 家族で揉める可能性が少しでもある
遺言書がないと、相続人全員で話し合って分けることになります。
1人でも反対すると、手続きが止まってしまいます。
☑ 親の判断する力に不安が出てきている
認知症が進んでしまうと、遺言書も家族信託も新しく作ることはできなくなります。
☑「誰に何を渡すか」をぼんやり考えているだけ
頭の中で考えているだけでは、法律上の効力はありません。
遺言書に書いて初めて意味を持ちます。
☑ 相続税が気になる
相続税の申告は、亡くなってから10か月以内です。
早めに概算を知っておくと、対策の選択肢が広がります。

「親に遺言書を書いてほしい」というのは、決して冷たい話ではありません。
むしろ、家族の関係を大切にしたいからこそ出てくる気持ちです。

親御さんの方も、子どもたちの将来を思って遺言書を書きたいと思っていることが多いものです。
ただ「どこから手をつければいいか分からない」「面倒くさそう」と感じて、なかなか踏み出せないだけかもしれません。

判断する力があるうちに動くこと——これが、ご家族を守る一番確実な方法です。
不安なことがあれば、ぜひ一度ご相談ください。親御さんと一緒にお話を伺うこともできます。

当事務所のサポート内容

こんな状況の方からご相談いただいています。

親に遺言書を書いてほしいが、どう切り出せばいいかわからない
親の判断能力が心配で、元気なうちに準備したい
兄弟姉妹で揉めないように、親に決めておいてほしい

親御さんと一緒のご相談、お子さま方のみのご相談、どちらも対応しています。
ご家族の状況をお聞きした上で、遺言書の作成から公証役場での手続きまでトータルでサポートします。

🏛 行政書士(当事務所)
遺言書の作成サポート
内容のご相談
公証役場での手続きサポート
⚖ 司法書士(ご紹介)
相続登記(所有権移転)
(2024年4月より義務化)
📊 税理士(ご紹介)
相続税の申告・納税
準確定申告

三重県鈴鹿市の行政書士事務所

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まとめ
大事な
条件
判断する力があるうちにしか書けない
認知症が進むと、遺言書も家族信託も新しく作ることはできなくなる
年代別
50代から準備を始めるのが理想・70代前半までに公正証書遺言を
準備が遅れるほど、選べる手段が少なくなっていく
今が
最善
判断する力がある「今」が、家族を守る一番のタイミング
遺言書は何度でも書き直せる。まずは作ってみることが大切
【免責事項】この記事は情報提供を目的としており、法律的なアドバイスではありません。状況によって手続きや結果が異なりますので、具体的なご相談は専門家にお問い合わせください。

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