「親が認知症になったら、預金や不動産はどうなるの?」——そんな疑問をお持ちの方も、少なくないかもしれません。
実は、認知症などで物事の判断が難しくなると、本人の財産は事実上「凍結」されます。
預金が引き出せない、自宅を売れない、施設費用が払えない——こうした状態が、相続が起きるよりずっと前から続くことがあります。
この記事では、認知症で起きる財産凍結の仕組み・3つの対策(家族信託・任意後見・法定後見)の違い・遺言書との組み合わせ方を、三重県鈴鹿市の行政書士がわかりやすく解説します。
認知症で起きる「財産凍結」とは
「財産凍結」と聞くと、亡くなった後の口座凍結を思い浮かべますよね。ですが、認知症による財産凍結は、ご本人が生きているうちに起きる、別の問題なんです。
認知症などで物事の判断が難しい状態と確認されると、ご本人名義の財産は「動かせない状態」になります。預金の引き出しも、不動産の売却も、契約の見直しも、原則できなくなるのです。
これは、ご本人が物事を判断できる状態になければ、契約や手続きが法律上認められないためです。ご家族が代わりに動こうとしても、ご本人の意思を確認できないため、金融機関や役所が応じてくれません。
凍結が起きると、何が困るのか
財産凍結が起きると、ご本人とご家族の暮らしにどんな影響が出るのでしょう。よくあるケースを4つ、ご紹介します。
認知症の方の平均介護期間は約5〜10年と言われています。その間ずっと、ご本人のお金がご本人のために使えない状態が続くこともあります。相続が起きるよりずっと前から、こうした状態が続くケースは少なくありません。
3つの対策の違い(家族信託・任意後見・法定後見)
認知症による財産凍結を防ぐ、あるいは凍結後の備えとして、主に3つの制度があります。それぞれ仕組みも費用も大きく違うので、ご家庭の状況に合わせて選んでいきます。
判断能力があるうちに契約(発症後は不可)
信頼できる家族(受託者)
なし
◎ 財産管理のみ(介護・医療の代理は対象外)
初期30〜100万円程度/月額なし
判断能力があるうちに後見人を指定(契約)
ご本人が指定した人(家族・専門家)
発動時に家裁の監督人(後見人をチェックする役割の人)選任が必要
◎ 財産管理だけでなく介護・医療の代理もOK
契約時数万円/監督人報酬月1〜3万円
判断能力低下後に家裁へ申立て
家庭裁判所が選任(多くは専門家)
常に家裁の監督下
○ 財産管理+介護・医療の代理(柔軟な処分は不可)
申立て10〜20万円/月額2〜6万円継続
家族信託と任意後見は、判断能力があるうちにしか準備できません。認知症が進んでしまうと、選択肢は「法定後見」しか残らないのです。
法定後見は事前準備がない場合の最後のセーフティネットですが、ご本人の希望に沿った柔軟な財産活用が難しい・月額費用がずっとかかる、といった制約があります。「お元気なうちの準備」が圧倒的に望ましい理由はここにあります。
家族信託は財産管理だけが対象です。介護施設の入所契約や医療の同意といった「ご本人の身の回りのこと」は対象外なので、別途備えが必要になります。
一方、任意後見と法定後見は、財産管理に加えて「介護・医療の代理」もカバーできます。ご家庭の事情で介護・医療面の手続きも家族に任せたい場合は、任意後見が有力な選択肢になります。
家族信託の仕組みについて、もう少し詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。
遺言書も組み合わせる理由
3つの認知症対策(家族信託・任意後見・法定後見)は、あくまで「生前」の財産管理のためのもの。「亡くなった後に、誰に何を渡すか」までは決められないんです。
認知症対策はあくまで生前の話。死後の財産分配を明確にするには、遺言書(民法第960条以下)との組み合わせが必要です。
理想的な備えは、生前と死後の両方をカバーする組み合わせです。
生前は家族が柔軟に管理。死後は遺言書で分配を確実に。最も網羅性が高い組み合わせ。
家族信託より柔軟性は劣るものの、生前の信頼できる人を指定できる。介護・医療面の代理にも対応。
事前対策ができないまま認知症が進んだ場合の道。遺言書も認知症後では作れないので、これも生前準備が必要。
今すぐ動くべきチェックリスト
「うちはまだ早い」と感じる方も多いと思います。ただ、認知症対策はお元気なうちにしか動けないテーマなんです。下のチェックリストで、現状を確認してみてください。
👉 「ご本人65歳以上」にチェックがついた方で、他がほとんど未対応の場合は、早めの専門家相談をおすすめします。
いきなり全部やる必要はありません。できることから、ひとつずつで大丈夫です。
「親が元気なうちに、何かしておいた方がいいんでしょうか」——このような疑問をお持ちの方は、少なくないと思います。
認知症は、誰にでも起こりうることです。だからこそ「対策は元気なうちに」と私はお伝えしています。物事の判断が難しくなってからでは、家族信託も任意後見も遺言書も、いずれも作れません。残るのは「法定後見」という選択肢だけになり、ご本人の希望に沿った財産活用が難しくなります。
大事なのは、「お元気なうちこそが、選択肢のあるうち」ということ。ご家族で話し合い、選択肢を整理しておく——それだけで、ご本人にとってもご家族にとっても、これからの安心感は大きく違います。
「うちはどの対策が合っているか分からない」という段階でも構いません。
当事務所では、ご家庭の状況をお伺いした上で、必要があれば提携の司法書士・弁護士・税理士をご紹介します。
一緒に考えさせてください。
認知症対策では、業務ごとに担当できる専門家が分かれています。当事務所では行政書士業務を担当しつつ、必要に応じて他の専門家をご紹介しています。
三重県鈴鹿市の行政書士事務所
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まとめ
本記事は一般的な情報提供を目的としており、法的助言を提供するものではありません。個別の事情により対策の内容が異なります。具体的なご相談は、行政書士・司法書士・弁護士等の専門家にお問い合わせください。
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