はじめに

「会社を息子に継がせたいけれど、株はどう渡せばいいんだろう」
「親の事業を引き継ぐ予定だが、何から準備すればいいかわからない」
「個人事業の店舗や工場を後継者に渡したいが、税金が心配」

事業を次の世代に引き継ぐ「事業承継」は、ご家族の相続とは違うむずかしさがあります。
特に大きいのは「経営を止めない」という視点です。手続きが遅れている間に、取引先との契約や日々の業務に影響が出てしまうこともあります。

そのため、事業承継では生前贈与で計画的に後継者に株式を移していくのが基本です。

亡くなってから動き出すのでは、どうしても経営の空白ができてしまいます。

この記事では、生前から進める事業承継の進め方・知っておきたい税制や補助金・遺言書の役割・遺留分対策・専門家の使い分けを、わかりやすく解説します。

STEP 1遺言書だけでは経営を守れない理由

事業承継の対策というと、まず遺言書を思い浮かべる方も多いと思います。
ただ、実は遺言書だけでは経営を守りきれないことがあります。
なぜ生前から動く必要があるのか、代表的な3つの理由を見てみましょう。

経営の空白ができてしまう
遺言書で株式を後継者に残すと決めていても、亡くなってから名義変更が完了するまで数週間〜数か月かかります。
その間は経営の意思決定がしづらくなり、取引先との契約や日々の業務に影響が出ることがあります。
他の家族から「遺留分」の請求を受けることがある
「遺留分」とは、相続人に法律で保証された最低限の取り分のことです。
株式の評価額が遺産の大半を占めるケースでは、後継者以外のご家族から多額のお金を請求されることがあります。後継者がそのお金を準備できないと困ってしまいます。
有利な税制が使えないことがある
事業承継には、相続や贈与にかかる税金を大幅に軽くできる「事業承継税制」という制度があります。
ただし、この制度を使うには事前の計画書の提出など、生前からの準備が必要です。遺言書だけでは活用できません。

事業承継で「経営を止めない」ためには、生前贈与で計画的に後継者に株式を移していくのが基本です。
遺言書は、生前に渡しきれなかった分の備えや、後継者以外への財産の分け方を決めておくための補完的な役割になります。ここからは、その基本となる税制と対策を見ていきましょう。

STEP 2知っておきたい税制と補助金

事業承継には、税金の負担を軽くしたり、必要な費用を補助してくれる制度があります。
代表的な3つをご紹介します。

🏢 ① 法人版事業承継税制(特例措置)

非上場株式を後継者に引き継ぐときの贈与税・相続税が100%猶予・免除される強力な制度です。
通常なら高額になるはずの税金を、要件を満たし続ければ実質ゼロにできます。

⏰ 期限に注意
・特例承継計画の提出期限:令和9年(2027年)9月30日まで
・制度の適用期限:令和9年(2027年)12月31日まで
(適用期限は延長しない方針が政府から示されています)

途中で要件を外れると、猶予されていた税金を一括で納める必要が出てくるため、長期的な「出口」を考えた設計が大切です。

🏪 ② 個人版事業承継税制

個人事業主の方が、店舗・工場・機械などの事業用資産を後継者に引き継ぐ場合に使える納税猶予の制度です。
法人版と同じく、要件を満たせば税金が大幅に軽くなります。

適用期限:令和10年(2028年)12月31日まで

💴 ③ 事業承継・M&A補助金

承継したあとの設備投資や、専門家への相談費用などを補助してくれる制度です。
電子申請には「GビズIDプライム」の取得が必要で、公募の期間も決まっているため、計画的な準備が必要です。

STEP 3後継者を守る「遺留分」対策

事業承継で大きな問題になりやすいのが、先ほど触れた「遺留分」です。
株式の評価額が大きいと、後継者が他のご家族から多額のお金を請求されてしまうことがあります。具体例で見てみましょう。

⚠ こんなケースに注意

総財産5,000万円のうち、自社株の評価額が4,000万円というご家庭。
遺言書で「株はすべて長男(後継者)に」と書いていても、他のご家族には遺留分があるため、長男は他の家族にお金を支払う必要が出てくることがあります。

こうしたケースを避けるためには、生前から次のような対策を組み合わせるのが効果的です。

💰 対策① 生命保険で支払い資金を準備
後継者を受取人にした生命保険に入っておけば、遺留分の支払い資金を確保できます。「500万円×法定相続人数」までは相続税の非課税枠も使えます。
📈 対策② 段階的に株式を生前贈与
生前から少しずつ株を後継者に贈与しておくことで、相続のときの遺留分の対象を減らせます。事業承継税制と組み合わせれば税金も抑えられます。
📋 対策③ 経営承継円滑化法の特例を使う
後継者が取得した自社株を、遺留分の計算から外したり、評価額を固定したりできる特例です。家族全員の合意と家庭裁判所の許可が必要で、専門家のサポートが欠かせません。

STEP 4事業承継は生前対策が基本・遺言書はその補完

事業承継では、生前贈与を中心とした「生前対策」が基本です。
遺言書だけで対応できるケースは限定的で、多くの場合は生前から動く必要があります。判断のポイントを見てみましょう。

検討項目
遺言書中心でも対応可
生前対策が必要(多数派)
経営の引き継ぎ
亡くなった後でも問題ない場合
早めに後継者へ引き継ぎたい場合
遺留分への備え
財産に余裕がある場合
株式が財産の多くを占める場合
税制活用
特に活用しない場合
事業承継税制・補助金を使いたい場合

📋 遺言書を作るなら「公正証書遺言」がおすすめ

事業承継で遺言書を作る場合は、公証役場で作る公正証書遺言が安心です。
自分で書く遺言書は形式の不備で無効になることもありますが、公正証書遺言は公証人が内容を整えてくれるため、その心配がありません。会社の株式という大切な財産を扱うからこそ、確実な方法を選びたいところです。

📋 「遺言執行者」を決めておくとスムーズ

遺言執行者とは、遺言書の内容を実際に進めてくれる人のことです。
事業承継では、株式の名義変更や預金口座の手続きなど、専門的な作業がたくさん発生します。

あらかじめ専門家を遺言執行者に指定しておくことで、後継者の負担をぐっと減らせます。

事業承継は「経営を止めない」「後継者を守る」「家族の関係を保つ」「税金の負担を抑える」——この4つを同時に考える必要がある複雑なテーマです。
そのために、生前から計画的に後継者に株式を移していく「生前贈与」が基本になります。

遺言書はあくまでその補完です。

「何から始めればいいかわからない」という段階でも、まずは一度ご相談ください。

当事務所のサポート内容

こんな状況の方からご相談いただいています。

会社や個人事業を後継者に引き継ぎたいが、何から始めればいいかわからない
事業承継税制を使いたいが、期限が迫っていて焦っている
株式の評価額が大きく、他の家族との関係が心配
親の事業を引き継ぐ予定だが、準備のしかたがわからない

事業承継は、行政書士・税理士・司法書士の連携が欠かせません。
当事務所では遺言書作成と補助金申請のサポートを行い、税務と登記は提携の専門家と協力して進めます。

🏛 行政書士(当事務所)

遺言書の作成サポート

⚖ 司法書士(ご紹介)
株式・不動産の名義変更
相続登記(2024年4月より義務化)
📊 税理士(ご紹介)
株価算定・税務対策
事業承継税制の申請
相続税の申告

三重県鈴鹿市の行政書士事務所

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まとめ
生前
対策
事業承継は生前贈与が基本・遺言書はその補完
経営を止めないためには、生前から計画的に後継者に株式を移していく
期限
注意
事業承継税制:特例承継計画は令和9年9月30日まで
制度の適用期限は令和9年12月31日まで・延長されない方針
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【免責事項】本記事は一般的な情報提供を目的としており、法的助言を提供するものではありません。事業承継・相続税の対策は税理士・行政書士等の専門家にご相談ください。

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