はじめに

はじめに

遺言を作成しても「全財産を自由に分配できる」わけではありません。一定の相続人には遺留分という最低限の取り分が法律で保障されており、これを無視した遺言は後からトラブルになる可能性があります。

この記事では、遺留分の計算方法・請求の手順と時効・請求された場合の対応・事前対策・生前贈与との関係を詳しく解説します。

遺留分とは何か(民法第1042条)

STEP 1遺留分とは何か(民法第1042条)

遺留分とは、一定の相続人に法律上保障された最低限の取り分です。遺言で侵害しても無効にはなりませんが、侵害された相続人から金銭で請求されることがあります(遺留分侵害額請求・民法第1046条)。

📋 遺留分がある相続人・ない相続人
あり 配偶者・子(代襲相続人含む)・直系尊属(父母・祖父母等)
なし 兄弟姉妹・甥姪
📋 遺留分の割合と計算例
原則 遺産全体の1/2が遺留分の対象
例外 相続人が直系尊属のみの場合:遺産全体の1/3
計算例:遺産3,000万円・配偶者+子2人
遺留分の対象:3,000万円×1/2=1,500万円
配偶者の遺留分:1,500万円×1/2=750万円
各子の遺留分:1,500万円×1/4=375万円ずつ

遺留分侵害額請求の手順と時効

STEP 2遺留分侵害額請求の手順と時効
⚠ 時効は「相続開始と侵害を知った時から1年以内」
相続開始と遺留分侵害を知った時から1年以内に意思表示が必要(民法第1048条)
相続開始から10年経過すると知・不知にかかわらず権利消滅
2019年改正で金銭での支払いのみ(物の返還請求は不可)
1
内容証明郵便等で相手方に意思表示(時効の進行を止めるため)
2
当事者間で協議(金額の交渉)
3
合意できない場合は家庭裁判所へ調停・訴訟を申し立て

遺留分を請求された側の対応

STEP 3遺留分を請求された側の対応

内容証明郵便などで遺留分侵害額請求を受けた場合、慌てて全額を支払う必要はありません。落ち着いて次の手順で対応することが重要です。

1
請求額が正しいか確認する 遺留分の計算は「遺産の範囲・評価額・生前贈与の加算」が正確でないと金額が変わります。まず弁護士に相談して計算の妥当性を確認する
2
支払い方法・時期を協議する 2019年改正で金銭支払いのみが原則になりましたが、支払い時期は当事者間で交渉できます。一括が難しい場合は分割払いの合意も可能
3
支払い期限の延長を裁判所に申し立てる(民法第1047条第5項) 現金がすぐに用意できない場合、裁判所に支払い期限の延長(猶予)を申し立てることができます
4
協議がまとまらない場合は調停・訴訟へ 家庭裁判所への調停申し立てが一般的。調停不成立なら訴訟(地方裁判所)へ移行します
⚠ 請求を受けたらすぐに弁護士へ相談を

遺留分侵害額請求は金額の計算・交渉・法的手続きすべてが専門的です。請求を受けた時点で弁護士(相続専門)に相談することを強くおすすめします。なお行政書士・司法書士は訴訟代理はできませんが、相続手続き全体の整理サポートは可能です。

遺留分トラブルを防ぐ3つの事前対策

STEP 4遺留分トラブルを防ぐ3つの事前対策
対策① 遺留分以上の配分設計
各相続人の遺留分を計算し、遺留分以上の財産を配分する遺言を作成する。請求されるリスクを大幅に減らせる
対策② 生命保険で遺留分相当額を準備
「長男に自宅を相続させる」遺言を書く一方、次男の受取人として遺留分相当額の生命保険を準備。保険金は遺産分割の対象外なので確実に渡せる
対策③ 遺留分の事前放棄(民法第1049条)
生前に相手の同意を得て家庭裁判所の許可を受けて遺留分を放棄してもらうことも可能。ただし相手の同意が必要で実務上難しいケースが多い

生前贈与と遺留分の関係(10年ルール)

STEP 5生前贈与と遺留分の関係(10年ルール)
⚠「生前贈与すれば遺留分は関係ない」は誤解

相続開始前10年以内の相続人への生前贈与(特別受益(特定の相続人が受けた特別な利益))は遺留分の計算に加算されます(民法第1044条)。

例:10年以内に自宅を長男に贈与した場合→贈与財産が遺留分計算に含まれ、次男から遺留分侵害額請求を受ける可能性があります。贈与から10年以上経過した贈与は遺留分計算の対象外になります。

まとめ

まとめ
計算式
遺産×1/2×法定相続分=各人の遺留分
民法第1042条|兄弟姉妹・甥姪には遺留分なし
時効
注意
相続開始+侵害を知った時から1年以内に請求が必要
民法第1048条|2019年改正で金銭精算のみ(物返還不可)
請求
された
まず計算の妥当性を確認→協議→支払い期限の延長も可能
民法第1047条第5項|慌てず弁護士(相続専門)に相談を
生前
贈与
10年以内の相続人への贈与は遺留分計算に加算
民法第1044条|10年超の贈与は対象外

⚠「贈与すれば安心」は誤解

【免責事項】
本記事は一般的な情報提供を目的としており、法的助言を提供するものではありません。個別の事情により手続きや結果が異なる場合がありますので、具体的なご相談は専門家にお問い合わせください。

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