はじめに

お子さんがいないご夫婦の相続は、一見シンプルに見えます。でも実際には、配慮すべき点が思った以上に多くあります。

「うちは配偶者だけだから手続きはスムーズなはず」——そう思っていたご家庭でも、数年後の二次相続や、配偶者の認知症で苦労されるケースは少なくありません。

この記事では、お子さんがいないご夫婦が見落としやすい3つのリスクと、長期的な対策を一つずつ整理しています。読み終わるころには、「ご夫婦で何を準備しておけば安心か」が見えてくるはずです。

STEP 1配偶者だけだから安心ではない3つの理由

「配偶者だけだから大丈夫」と思って準備を進めていたら、後から「えっ、そうだったの?」と気づくケースが意外と多いものです。代表的な3つのケースを、順番に見ていきましょう。

リスク① 二次相続で想定外の親族に財産が渡る可能性

お子さんがいないご夫婦の場合、配偶者が亡くなった後の二次相続では、配偶者の親族が相続人になります。配偶者の親族の状況によって、相続人とその権利は変わります。

パターンA:父母・祖父母が存命
相続人=配偶者の父母・祖父母 / 遺留分:あり(1/3)
パターンB:兄弟姉妹のみ
相続人=配偶者の兄弟姉妹 / 遺留分:なし(遺言で自由に指定可能)
パターンC:兄弟姉妹も既に亡くなっている
相続人=甥姪が代襲相続(兄弟姉妹の代わりに相続) / 遺留分:なし

※遺留分とは、法定相続人に保障される最低限の取り分のことです。

リスク② 配偶者の認知症で資産が動かせなくなる

配偶者が判断能力を失うと、不動産の売却や預金の解約が難しくなります。施設入居費用が必要になっても自宅を売却できないなど、生活面で困難が生じる可能性があります。判断能力があるうちに対策を講じておくことが大切です(STEP3で解説)。

リスク③ 実は「配偶者のみ」ではないケース

亡くなった方に前のご結婚のお子さんや認知した子(法律上の親子関係を結んだ子)がいる場合、その方も法定相続人になります。戸籍調査で初めて発覚するケースが多く、その場合は面識のない相手との遺産分割協議が必要になることもあります。

STEP 2遺言で備える(リスク①③への対策)

3つのリスクのうち、①二次相続で想定外の親族に財産が渡る可能性③前のご結婚のお子さんがいる場合のリスクは、遺言書を作っておくことで備えることができます。ここでは2つの遺言の使い方をご紹介します。

2-1. 予備的遺言とは

遺言書を作るとき、多くの方は「自分が先に亡くなる前提」で書きます。でも、誰がいつ亡くなるかは、誰にも分かりません。「もし配偶者が先だったら?」——その備えとして、財産の受け取り手が先に亡くなった場合に次の受け取り人を指定するのが「予備的遺言」です。

📋 予備的遺言の記載例
「第○条 遺言者は全財産を妻○○に相続させる。ただし妻○○が遺言者よりも先に死亡した場合または同時に死亡した場合は、全財産を△△(具体的な人・団体等)に遺贈する」

📌 予備的遺言が使えるケース・使えないケース
✅ ご本人が先に亡くなった場合
→ 配偶者が全財産を相続(通常の遺言が機能)
✅ 配偶者が先に亡くなった場合
→ 予備的遺言が発動し、指定した方へ
❌ 配偶者が後から亡くなった場合
→ ご本人の予備的遺言は使えない。配偶者自身の遺言が必要
⚠ 予備的遺言だけでは「配偶者が後から亡くなる場合」に対応できない

予備的遺言は、配偶者が「先に」亡くなった場合に備える仕組みです。配偶者が「後から」亡くなる場合の二次相続には、配偶者自身の遺言が別途必要になります(次に解説)。

2-2. 夫婦お互いに遺言を作る

「配偶者が後から亡くなる場合」に対応するためには、ご夫婦お互いに遺言を作っておくことが大切です。お互いに予備的遺言を入れておけば、どちらが先でも後でも、財産の行き先が明確になります。

📜 夫の遺言
通常時:全財産を妻に相続させる
予備的:妻が先に死亡した場合は△△へ遺贈
📜 妻の遺言
通常時:全財産を夫に相続させる
予備的:夫が先に死亡した場合は△△へ遺贈

どちらが先に亡くなっても、財産の行き先が明確になります。お子さんがいないご夫婦の場合、特にこの設計が大切です。

STEP 3認知症に備える(リスク②への対策)

遺言は「亡くなった後」の備えでした。もう一つのリスクである配偶者の認知症には、生前のうちに別の対策が必要です。判断能力を失うと、預金の解約や不動産の売却ができなくなってしまいます。

認知症対策には、ご家庭の状況に応じて選べる複数の選択肢があります。費用や手続きの規模が違うので、ご自身のご家庭に合うものを検討していきましょう。

A. 手軽に始められる対策
📝 任意後見契約
判断能力があるうちに、信頼できる方(ご家族や専門家)と将来の財産管理を委任する契約を結んでおく方法。実際に認知症が進んだ後、家庭裁判所の手続きを経て契約が発効します。
費用の目安:数万円〜(公正証書作成費+契約報酬)/対応:行政書士・司法書士・弁護士
💳 預貯金の代理人カード・代理人指名
銀行で家族が代理人として登録される手続き。本人の判断能力が低下した後も、代理人が口座から引き出せる仕組み。銀行によって名称・条件が異なります。
費用の目安:銀行の所定手数料/対応:各金融機関の窓口

B. ある程度の財産規模のご家庭向け
🏦 家族信託
判断能力があるうちに、信頼できるご家族に財産管理を託す契約。認知症になっても、不動産売却や預金管理を継続できます。受益者連続型信託(2代先まで財産の行き先を指定できる仕組み)も活用可能。
費用の目安:数十万円〜(契約書作成・信託登記費用)/対応:司法書士・弁護士
🏛 信託銀行の遺言信託・遺言代用信託
ご家族に財産管理を託すのが難しい場合や、専門機関に任せたい場合の選択肢。遺言書の作成・保管・執行をワンストップでサポート。
費用の目安:信託銀行所定の料金/対応:信託銀行
⚠ これらの対策は当事務所では取り扱っていません

家族信託は司法書士・弁護士の業務、信託銀行のサービスは各金融機関での手続きになります。当事務所では取り扱っておりません。家族信託については信頼できる司法書士をご紹介できます。信託銀行のサービスは、各金融機関に直接ご相談ください。

「うちはどの対策が合うのか」が分からないという場合も、まずは現状の財産・ご家族構成を整理することから始めるのが第一歩です。

お互いを支え合いながら歩んでこられたご夫婦には、それぞれに大切な時間がありますよね。

何気ない日々の積み重ねが、かけがえのないものだと感じる瞬間が、ふと訪れるのではないでしょうか。

「相手に少しでも安心を残したい」

「自分がいなくなった後も、不安な思いをさせたくない」

——そんなお気持ちは、長くともに過ごしてこられたからこそ、自然に湧いてくる愛情のかたちなのだと、私はいつも感じています。

未来のことは、誰にも分かりません。

だからこそ、今のうちに「相手を想う気持ち」を確かな形にしておけたら、お二人の毎日に、ささやかな安心が増えていくはずです。

「何から話せばいいか分からない」——その段階で構いません。

ご夫婦のこれまでの歩みや、これからのお気持ちを丁寧にお伺いしながら、一緒に考えさせていただきます。

お二人だけで抱え込まずに、まずはお話を聞かせてください。

行政書士髙橋 大輔

当事務所のサポート内容

配偶者のみの相続対策では、業務範囲が複数の専門家にまたがります。必要に応じて連携してお手伝いします。

🏛 行政書士(当事務所)
遺言書(予備的遺言含む)の起案
財産目録の作成
ご家族状況の整理
公正証書遺言サポート
⚖ 司法書士(ご紹介)
家族信託の設計・契約書作成
不動産の信託登記
任意後見契約の作成
📊 税理士(ご紹介)
二次相続を見据えた税額シミュレーション
相続税の試算と節税対策

三重県鈴鹿市の行政書士事務所

配偶者のみの相続対策についてお気軽にご相談ください

初回相談無料・三重県全域・出張対応可

対応業務・費用・対応エリアを確認する →無料相談のお問い合わせはこちら →LINEで無料相談する →

お電話・メール・LINEにて受付中

まとめ
二次
相続
兄弟姉妹には遺留分がないため、遺言で財産の行き先を完全に指定できる
直系尊属が存命の場合は遺留分1/3への配慮が必要
予備的
遺言
配偶者が先に亡くなった場合の財産の行き先を指定できる
配偶者が後から亡くなる場合は配偶者自身の遺言が別途必要
夫婦
両方
夫婦お互いに遺言を作っておく
どちらが先に亡くなっても財産の行き先が明確に
認知症
対策A
任意後見契約・預貯金代理人カードで手軽に備える
数万円〜の費用で対応可能。ご家庭の状況に合わせて選択
認知症
対策B
家族信託は司法書士・弁護士へ(ご紹介可能)
受益者連続型信託で2代先まで指定可。ある程度の財産規模向け
【免責事項】
本記事は一般的な情報提供を目的としており、法的助言・税務助言・保険商品の推奨を行うものではありません。個別の事情により手続きや結果が異なる場合がありますので、具体的なご相談はそれぞれの専門家(行政書士・弁護士・司法書士・税理士・保険会社・FP等)にお問い合わせください。

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