はじめに

相続で困るケースの多くは、「知っていれば防げた」ことから始まります。

逆に言えば、起こりがちなパターンを知って、ほんの少し準備しておくだけで、ご家族の負担は大きく変わります。

この記事では、相続でよくある4つのケースと、それを防ぐためにできる準備を、行政書士が具体的にご紹介します。

ケース①:財産がどこにあるかわからない

ケース①財産がどこにあるかわからない
📖 こんなケースがありました

お父様が亡くなり、お子さんたちが相続手続きを始めました。ところが、お父様は財産のことを誰にも話しておらず、ご家族はどこに何があるかまったく分かりません。引き出しの中から通帳を1冊ずつ探し、未開封の郵便物から保険証券や証券会社の存在を知り——財産の全体像を把握するだけで、数か月かかってしまいました。ネット銀行の口座は、最後までパスワードがわからず、現金化できないままになりました。

起きたこと:財産の把握に数か月。手続きが進まず、ネット銀行の資産は受け取れないまま。
💡 防ぐためにできる3つの行動

大事なのは、ご家族が「どこに何があるか」を知っている状態を作っておくこと。今からでも、次の3ステップで始められます。

今すぐ

1. 通帳・証券・保険証券を1か所にまとめる
引き出しに散らばっているものを、一つの引き出しや書類ケースに集めるだけで、ご家族の「探す手間」が激減します。

今週中

2. A4一枚に「どこに何があるか」を書き出す
完璧な財産目録でなくて構いません。次の項目を箇条書きで十分です。
📌 銀行口座(銀行名・支店名)
📌 ネット銀行・証券口座(サービス名・ID保管場所)
📌 不動産(所在地)
📌 生命保険(保険会社・受取人)
📌 借入金・保証債務

今月中

3. メモの「保管場所」だけは家族に伝える
内容まで開示する必要はありません。「もしものとき、この引き出しを見て」とひと言伝えるだけで、いざというとき、ご家族はすぐに動けます。

財産目録の作り方をもっと詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。

ケース②:相続の期限を過ぎてしまった

ケース②相続の期限を過ぎてしまった
📖 こんなケースがありました

お父様の葬儀や法事に追われ、相続のことを落ち着いて考える時間が取れないまま3か月が過ぎました。その後、財産整理を進める中で、お父様が連帯保証人になっていた借金があることが判明。相続放棄は「相続を知ってから3か月以内」が原則のため、ご家族は借金も含めて相続せざるを得なくなりました。

起きたこと:相続放棄の3か月期限を過ぎたことで、借金を引き継ぐことに。
💡 こんな準備で防げます

相続の主な期限を、あらかじめ知っておくこと。流れがわかっていれば、葬儀の合間にも適切なタイミングで動けます。

3か月
相続放棄の判断期限
借金が多い場合などに「相続しない」という選択ができる期間
4か月
準確定申告の期限
亡くなった方の所得税の申告
10か月
相続税申告の期限
相続税がかかる場合の申告。各種特例もこの期限内

⚠ 相続が発生したら、最初の3か月以内に必ずやること
故人の財産(プラス・マイナス両方)をざっくり把握する
借入金・保証債務がないかを確認する
借金が多い場合は、相続放棄を検討する(期限:3か月)
判断が難しい場合は、早めに専門家に相談する

👉 葬儀・法事の合間でも、「借金がないか」だけは早めに確認を。これだけで、選択肢が消えるリスクをぐっと減らせます。

ケース③:相続税の納税資金が足りなかった

ケース③相続税の納税資金が足りなかった
📖 こんなケースがありました

お父様の財産はほとんどが自宅と土地、現金や預貯金は数百万円ほど。遺言書はきちんと用意されていましたが、相続税の試算をしたところ、ご家族には現金で支払うのが厳しい金額が発生することが判明しました。納税期限の10か月以内に現金を用意するため、ご家族は住んでいた自宅を急いで売却することに。

起きたこと:遺言書はあったが、納税資金が用意できず、住んでいた自宅を売ることに。
💡 防ぐためにできる3つの行動

納税資金不足のリスクは、事前に「自分のご家庭がどうか」を把握しておけば、十分備えられます。次の3ステップで確認してみてください。

確認①

財産に占める「不動産の比率」をチェック
財産のうち、不動産が7割以上なら要注意。納税のための現金が不足する可能性が高いケースです。

確認②

相続税の基礎控除を超えそうかチェック
「3,000万円+600万円×法定相続人の数」が基礎控除。この金額を遺産総額が超えそうなら、相続税の対象になります。

行動

①と②が当てはまるなら、生命保険を検討
生命保険には「500万円×法定相続人」の非課税枠もあり、納税資金準備の代表的な手段です。70歳までに加入を済ませることが望ましいです。

⚠ もうひとつ:二次相続のリスクも視野に

相続税は「一次相続」だけでなく「二次相続」も含めた長期視点で考えるのが大事です。配偶者控除をフル活用しすぎると、お子さんの代でかえって税負担が増えるケースもあります。

生命保険を使った納税資金の準備について、こちらで詳しく解説しています。

ケース④:家族で意見が分かれた

ケース④家族で意見が分かれた
📖 こんなケースがありました

お父様は生前、財産のことを誰にも話していませんでした。お子さん3人で遺産分割の話し合いを始めましたが、「お父さんはこう思っていたはず」と互いに違う解釈をして意見が分かれます。長年同居して介護されていた長男、家を出てから連絡が少なかった次男、遠方に嫁いだ長女——それぞれの立場で主張が食い違い、遺産分割協議は1年以上続きました。

起きたこと:遺産分割協議が1年以上続き、ご家族の関係も気まずいものに。
💡 防ぐためにできる3つの行動

「家族会議」のように構えなくて大丈夫。日常の中で、自然に対話を始める方法があります。

きっかけ

家族が集まる機会を使う(お盆・お正月など)
「もし何かあったときのために」と切り出すだけで、対話は始まります。改まった場より、普段の延長線上の方が話しやすいものです。

道具

エンディングノートを介して伝える
直接話すのが照れくさい場合、エンディングノートに想いを書いて「ここに書いておいたよ」と渡すだけでも、十分な対話になります。

話題

まずはこの3つだけ共有する
いきなり「全財産の分け方」を話す必要はありません。次の3つを共有するだけで、争いの種は大きく減ります。
💬 通帳・保険証券などの保管場所
💬 自宅・お墓をどうしたいか
💬 介護や葬儀の希望

エンディングノートの活用方法はこちらをご覧ください。

4つのケースを見ていただきましたが、共通しているのは「情報が伝わっていなかった」ということです。財産のありか、相続の期限、納税資金の備え、家族への意向——どれも生前にひと言伝えておけば防げたケースでした。

この記事の各ケースで示した「行動ステップ」は、どれも30分〜1時間あれば取り組めるものです。「いつかやろう」が「いつまで経ってもやらない」になりがちなテーマだからこそ、まず今週中にひとつだけ、始めてみてください。

特におすすめは、ケース①の「通帳・証券を1か所にまとめる」。これだけで、ご家族が困るリスクが大きく減ります。さらに余裕があれば、ケース④の「家族とのひと言の対話」を加えると、もっと安心できます。

「うちの場合は何から手をつければ?」という個別のご相談も、お気軽にどうぞ。ご家庭の状況をお伺いしながら、優先順位を一緒に整理させていただきます。

行政書士髙橋 大輔

当事務所のサポート内容

相続対策は複数の専門領域にまたがります。当事務所では行政書士業務を担当しつつ、必要に応じて他の専門家をご紹介しています。

🏛 行政書士(当事務所)
遺言書の起案サポート
遺産分割協議書の作成
相続関係説明図の作成
戸籍収集代行
⚖ 司法書士・弁護士(ご紹介)
家族信託の設計・契約書作成
任意後見契約の作成
不動産の名義変更登記
相続トラブルへの対応
📊 税理士(ご紹介)
相続税の試算・申告
贈与税の試算
税負担を抑える具体的な対策

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まとめ

まとめ
ケース
財産がわからない → 財産目録のメモを残す
ご家族の情報集めの負担が大きく減ります
ケース
期限を見逃した → 3か月・4か月・10か月の期限を知る
流れを知っているだけで、慌てない
ケース
納税資金不足 → 分配・資金・税務の3つの柱で備える
遺言書だけでなく、生命保険など資金面も考慮
ケース
家族で意見が分かれた → 生前にご家族と対話しておく
遺言書+背景の共有が、いちばんの予防策
【免責事項】
本記事は一般的な情報提供を目的としており、法的助言・税務助言を提供するものではありません。記事内のケースは複数の事例をもとに構成した一般化された例です。具体的なご相談は行政書士・司法書士・弁護士・税理士等の専門家にお問い合わせください。

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