はじめに
相続税の計算でまず確認するのが「基礎控除」です。財産がこの金額以下なら、原則として相続税はかかりません。
計算式自体はシンプルです。ただ、「相続人を何人と数えるか」で、結果が大きく変わってしまうんです。
— たとえばこんなご相談 —
先日いらっしゃったEさん(仮名・50代)。お父様の相続で、相続人はEさんと弟さん、お父様が生前に養子に迎えていたお孫さんの3人です。
弟さんが「相続放棄をしようと思う」と言い出したとき、Eさんが心配したのは——「弟が相続放棄したら、基礎控除も2人分になっちゃうの?」ということ。
実は、相続放棄しても基礎控除の計算では人数に含めます。さらに養子の数にもルールがあって——日常では考えないルールが、たくさんあるんです。
この記事では、基礎控除の計算式と家族構成別の具体例、相続人の数え方の注意点を、三重県鈴鹿市の行政書士がわかりやすくお伝えします。
基礎控除の計算式の意味
「基礎控除」って言葉、難しそうに聞こえますよね。でも、計算式自体はとてもシンプルなんです。まずは式そのものを、ご一緒に見てみましょう。
基礎控除の計算式
3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数
この式、ちょっと分かりにくいかもしれませんが、2つのパーツに分けて見ると一気にスッキリしますよ。
①固定部分:3,000万円
どんなご家庭でも、まず3,000万円は基礎控除として引けます。家族構成に関係なく、誰でも引ける額です。
②人数加算:600万円 × 人数
相続人の数に応じて加算されます。相続人が多いほど基礎控除も増える仕組みです。
そもそも法定相続人って、誰のこと?
具体例を見る前に、ちょっと立ち止まらせてください。実は「誰が法定相続人になるか」のルールって、案外ややこしいんです。ここで整理しておくと、このあとの話がスッと入ってきますよ。
配偶者(奥さま・ご主人)は、ほかにどんなご家族がいても、いつも相続人になります。その上で、次の順位の方が相続人として加わる仕組みです。
お子さんがいる場合、第二順位以下の方は相続人になりません。お子さんが亡くなっている場合は、お孫さんが代襲相続人になります。
お子さん(と代襲相続人)がいない場合に、ご両親が相続人になります。ご両親も亡くなっていれば、祖父母が相続人になります。
お子さん・ご両親(と代襲相続人)がいない場合に、ご兄弟姉妹が相続人になります。ご兄弟姉妹も亡くなっていれば、甥・姪が代襲相続人になります。
💡 ポイント
上位の順位の人がいる場合、下位の順位の人は相続人になりません。
たとえばお子さんがいれば、ご両親やご兄弟は相続人にならない、ということです。
家族構成別の具体例
ここからは具体例です。代表的な家族構成で、基礎控除がいくらになるかを見てみましょう。ご自身のご家庭はどのパターンに近いですか?
👤 配偶者のみ(お子さんなし・親なし・兄弟なし)
1人
3,000万円 + 600万円 × 1 = 3,600万円
3,000万円 + 600万円 × 2 = 4,200万円
3,000万円 + 600万円 × 3 = 4,800万円
3,000万円 + 600万円 × 3 = 4,800万円
3,000万円 + 600万円 × 3 = 4,800万円
👫👨👩 配偶者+ご兄弟2人(お子さん・親なし)
3人
3,000万円 + 600万円 × 3 = 4,800万円
💡 法定相続人の決まり方
配偶者は常に相続人です。お子さんがいればお子さん、お子さんがいなければご両親、ご両親もいなければご兄弟——という順番で決まります。
法定相続人の数え方の注意点
さて、ここからが本題です。実は、相続税の計算で一番つまずきやすいのが、この「数え方」なんです。日常では考えないようなルールがいくつかあるので、ひとつずつ、ゆっくり見ていきますね。
📊 人数に「含む?」「含まない?」一覧
それぞれの理由や具体例は、各項目をタップしてご確認ください。
注意① 相続放棄をしても、人数には含める▼
たとえばお子さん3人のうち1人が相続放棄しても、基礎控除の計算では「3人」のままです。「放棄したから人数が減って、控除も減る」というのは誤解です。
注意② 養子の数には上限がある▼
相続税の計算では、養子の数に上限があります。実子の有無で変わります。
・実子がいる場合:養子は1人まで算入
・実子がいない場合:養子は2人まで算入
※民法上は何人でも養子縁組できますが、相続税の計算では制限があります。
注意③ 非嫡出子(婚外子)も、認知されていれば相続人▼
婚姻関係のないお相手とのお子さんでも、認知されていれば法律上の子として相続人になります。戸籍を見て初めて知った——というケースもあります。
注意④ 代襲相続:本来の相続人の代わりに、その子が相続人に▼
本来の相続人(たとえばお子さん)が亡くなっている場合、そのお孫さんが代わりに相続人になることがあります。これを「代襲相続」と呼びます。基礎控除の計算でも、お孫さん(代襲相続人)を1人と数えます。
注意⑤ 胎児:無事に生まれれば、相続人として数える▼
お父さまが亡くなったとき、奥さまのお腹に赤ちゃんがいる場合、その胎児も「すでに生まれたもの」として相続人に数えます。ただし、無事に生まれた場合に限り、相続人として確定します。
注意⑥ 相続欠格・廃除:相続権を失った人は人数に含めない▼
相続欠格(被相続人を殺害したり、遺言書を偽造するなど重大な事由がある場合)や、廃除(被相続人の意思で、家庭裁判所の手続きを経て相続権を奪う場合)に該当する方は、そもそも相続人ではありません。基礎控除の計算でも、人数に含めません。
※相続放棄(注意①)と異なる点に注意。相続放棄は「自分の意思で相続を辞退」なので人数に含む、欠格・廃除は「相続権そのものを失う」ので人数に含まない、という違いです。
注意⑦ 二重相続資格者:2つの資格があっても1人分▼
たとえば、お孫さんが祖父の養子になっていて、その後にお孫さんの親(お子さん)が亡くなった場合。お孫さんは「養子」と「代襲相続人」の2つの資格を同時に持つことになります。これを「二重相続資格者」と呼びます。
※民法上は2人分の相続分が認められますが、相続税の計算では1人分としてカウントします。少し特殊なケースなので、該当する方はご相談ください。
基礎控除を超えた場合の計算プロセス
「もし基礎控除を超えたら、どうなるの?」——気になりますよね。超えた金額がそのまま税額になるわけではなく、実は4つのステップで税額が決まるんです。実際の計算は税理士さんの業務になりますが、流れだけご紹介しますね。
課税遺産総額を法定相続分で按分
基礎控除を引いた残額を、法律で決まった「相続分」で各相続人に分けます
↓
各人の仮の取得額に税率を適用
取得額に応じて10〜55%の税率(超過累進)を適用します
↓
各人の税額を合計(相続税の総額)
家族全体での相続税の総額が決まります
↓
実際の取得割合で按分+各種控除
実際に相続した割合で按分し、配偶者軽減・未成年者控除などを適用
💡 特例で税額が大きく減るケースを詳しく知りたい方は
2026.04.03
はじめに
「うちは相続税かからないと思うけど、申告しなくて大丈夫?」——そんなご相談が多いです。
結論から言うと、財産の合計が一定額以下なら申告不要です。ただし「特例を使って0円」の場合は、申告しないと特例が使えなくなります。
...
— 髙橋からのメッセージ —
相続人の数え方も大切ですが——その前に、もうひとつ大切なことが
相続人の数え方、案外複雑でしたよね。でも実は、こうしたルールを正確に当てはめるためには、もうひとつ欠かせないことがあるんです。それが「戸籍収集」です。
ご家族構成を頭の中で整理するだけでは足りなくて、亡くなった方の出生から死亡までの戸籍を、すべて集めて確認していく必要があります。
ご本籍が転々と変わっているご家庭だと、いくつもの市役所に問い合わせて——その手続きだけで、何週間も時間が過ぎていくことも珍しくありません。
しかも、戸籍を一枚一枚読み解いていくと、ご家族も知らなかった事実が見つかることもあります。
「前のご結婚のお子さん」
「認知されたお子さん」
——相続人の確定を左右する情報が、戸籍にしか残っていないこともあるんです。
悲しみの中で、こんな大変な作業まで、どうかお一人で抱え込まないでください。
悲しみを少しずつ乗り越える時間、
忌引き休暇のあと会社に戻るために気持ちを立て直す時間
——そんな大切な時間こそ、大事にしてほしいんです。私たち行政書士が、代わりに動きますから。
「相続のこと、何から始めたらいいんだろう」
——そんな気持ちのとき、お話を聞かせてくださいね。
よくあるご質問
Q子が3人いて、1人が相続放棄をします。基礎控除はどうなりますか?▼
A
相続放棄をしても、基礎控除の計算では3人として数えます。よって基礎控除は3,000万円+600万円×3=4,800万円のままです。「放棄した分、控除が減る」という心配は不要です。
Q実子2人と養子3人がいます。基礎控除の計算では何人になりますか?▼
A
実子がいる場合、養子は1人までしか算入できません。実子2人+養子1人=合計3人として計算します。配偶者がいればその方も加えてください。
Q子が先に亡くなっていて、孫がいます。孫は人数に入りますか?▼
A
はい、お孫さんが「代襲相続人」として相続人になります。基礎控除の計算でもお孫さんを1人と数えます。お子さんに代わって孫が複数人いる場合は、その人数を全員カウントします。
Q戸籍を集めなくても、家族構成は分かるので大丈夫ですよね?▼
A
戸籍収集はぜひお願いします。亡くなった方の出生から死亡までの戸籍を確認することで、知らなかった相続人(前妻のお子さん、認知された子など)が判明することがあります。後から判明すると、相続手続きをやり直す必要が出てしまいます。
Q基礎控除を計算したら財産より少ないみたいです。何かしたほうがいいですか?▼
A
相続税の申告が必要になる可能性が高いので、早めに税理士へのご相談をおすすめします。当事務所では、まず戸籍収集・財産目録の整理を進めて、その情報を信頼できる税理士へスムーズに引き継ぎます。10ヶ月の申告期限があるので、早めに動くと安心です。
Q戸籍収集は自分でもできますか?▼
A
もちろん可能です。ただ、亡くなった方の本籍地が転々としている場合、複数の市役所に戸籍を請求する必要があり、時間と手間がかかります。当事務所では、戸籍収集を代行できます。ご相談ください。
当事務所のサポート
「相続のこと、何から始めたらいいかわからない」——そんなお気持ちのときは、ぜひ当事務所にお話しに来てください。三重県内・近隣県にお住まいの方を中心に、相続のご相談をお引き受けしています。
相続人の確定には戸籍収集が欠かせません。当事務所で戸籍収集と財産目録の整理を進めて、その情報を税理士に引き継ぐ流れがスムーズです。窓口は当事務所にひとつ。あちこちに相談に行く必要はありません。
📋 当事務所がサポートできること
・戸籍収集による相続人の確定
・財産目録の作成
・遺産分割協議書の作成
・信頼できる税理士へのご紹介とスムーズな引き継ぎ
🏛 行政書士(当事務所)
戸籍収集・相続人調査
財産目録の整理
遺産分割協議書の作成
📊 税理士(ご紹介)
相続税の申告
税額計算・特例適用
⚖ 司法書士(ご紹介)
不動産の相続登記
(2024年4月より義務化)
まとめ
計算式
3,000万円(固定)+600万円×法定相続人数
固定部分+人数加算で構成
数え方
相続放棄しても数に含む・養子は上限あり・欠格や廃除は含まない
代襲相続人・認知された子・胎児も対象になる
超過後
の計算
法定相続分で按分→税率→各種控除(4ステップ)
実際の税額計算は税理士の業務
戸籍
収集
正確な相続人の把握には戸籍収集が必須
行政書士が代行できる業務です
【免責事項】本記事は一般的な情報提供を目的としており、法的・税務的助言を提供するものではありません。相続税の申告は税理士の独占業務です。個別の判断は必ず税理士にご相談ください。