はじめに

「相続対策で、遺言と生命保険、どちらをやればよいですか?」——よくいただくご質問です。

答えは「どちらが優れているかではなく、役割が違うため両方が必要なケースがほとんど」。

遺言は「誰に何を渡すか」を法的に決める道具。

生命保険は「現金を確保して届ける」手段。

役割が全く違うからこそ、組み合わせることで本当に効果を発揮します。

この記事では、遺言と生命保険それぞれの役割、片方だけでは不十分な理由、ご家庭タイプ別の組み合わせ方を、三重県鈴鹿市の行政書士がわかりやすく整理します。

遺言と生命保険、それぞれの役割

STEP 1遺言と生命保険、それぞれの役割

遺言と生命保険は、相続対策で「両輪」の関係にあります。一見似ているように見えますが、果たす役割が全く違います

📄 遺言書の役割
「誰に何を渡すか」を法的に決める
自宅は長男に相続させる
預金は配偶者に渡す
株式は次男に渡す
→ 相続人同士の揉め事を防ぐ
🏦 生命保険の役割
「現金を確保して届ける」手段
相続税の納税資金を確保
遺留分(最低限の取り分)への支払い資金を準備
非課税枠(500万円×法定相続人)
→ 受取人指定で確実に届く
💬 遺言は「分け方を決める」、生命保険は「お金を準備する」。どちらか一方だけでは、相続が起きたときに困るケースが少なくありません。

どちらか一方では起きやすい問題

STEP 2どちらか一方では起きる典型的な失敗

「遺言だけ用意した」「保険だけ加入した」——どちらか一方では、相続が発生したときに想定外のことが起こりやすくなります。

⚠ 遺言だけのケース

財産が自宅不動産中心で現金が少ない場合、「長男に自宅を相続させる」という遺言があっても、相続税の納税資金や、他の相続人から遺留分を請求された場合の支払い資金がない状況に陥ります。

起きやすいこと:相続税の納税や遺留分への支払いが困難になることがある。せっかくの遺言があっても、現金が用意できないと思った形の相続にならない。

⚠ 保険だけのケース

受取人を指定した生命保険があっても、残りの財産(不動産・預金)の分配方針が決まっていないため、遺産分割協議で揉めるケースがあります。

起きやすいこと:保険金を受け取った相続人だけが多く受け取ったように見え、他の相続人から不満が出る。話し合いが難航する。
💬 「遺言だけ」「保険だけ」では、せっかくの備えが思ったように働かないことも。両方をバランスよく整えていくのがおすすめです。

こんなご家庭は組み合わせを(4つのケース)

STEP 3こんなご家庭は組み合わせを(4つのケース)

ご家庭の状況によって、遺言と生命保険の組み合わせ方が変わってきます。代表的な4つのケースを見てみましょう。

🏠 ケース①:不動産が多く、現金が少ないご家庭

財産のほとんどが自宅・土地で、預貯金が少ない場合。相続税の支払いや、他の相続人から遺留分を請求された場合の対応に、現金が必要になります。

👉 組み合わせ:生命保険で納税資金や遺留分への支払い資金を確保+遺言で分け方を確定

👨‍👩‍👧 ケース②:相続人同士の関係が複雑なご家庭

兄弟姉妹間で疎遠になっている、相続人同士の関係が良くない、遠方に住んでいて連絡が取りにくいなど、遺産分割協議が難航しそうなケース。

👉 組み合わせ:遺言で分配を明確化+生命保険で現金を別途準備(揉めにくい設計に)

📊 ケース③:相続税が心配なご家庭

財産が相続税の基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人)を超えそうな場合、節税対策と納税資金対策の両方が必要です。

👉 組み合わせ:生命保険の非課税枠(500万円×法定相続人)を活用+遺言で分け方を合わせる

👥 ケース④:再婚されていて、前のご結婚のお子さんがいるご家庭

現在の配偶者とお子さんに財産を残したいが、前のご結婚のお子さんもいるケース。前のご結婚のお子さんも法定相続人として遺留分(最低限の取り分)が認められています。

👉 組み合わせ:遺言書で分け方を明確にしつつ、前のご結婚のお子さんを受取人にした生命保険を別途準備しておくと、納得感が得られやすい設計になります
💬 ご家庭がどのケースに当てはまるかは、財産の構成・相続人の関係・税額の見通しによって変わります。1つに当てはまるとも限らず、複数の要素が重なるケースが多いです。

相続対策の全体像については、こちらで詳しく解説しています。

始める順序(先に何をやる?)

STEP 4始める順序(先に何をやる?)

「両方必要」と分かっても、「何から始めればいい?」が次の疑問。順序を間違えなければ、効率的に進められます

STEP 1

相続人と財産の整理(行政書士)
まずは「相続人が誰か」「財産がどれだけあるか」を把握します。戸籍収集による相続人の確定、財産目録の作成は行政書士の業務範囲です。

STEP 2

相続税の試算(税理士)
財産が基礎控除を超えそうなら、相続税の試算を税理士に依頼。納税額の目安が分かれば、必要な保険金額も見えてきます。

STEP 3

遺言書の起案(行政書士)
財産と相続人が確定したら、分け方を遺言書に落とし込みます。公正証書遺言(公証役場で作成する正式な遺言)なら確実性が高く、紛失のリスクもありません。

STEP 4

生命保険の設計(保険会社・FP)
必要な保険金額・受取人の設計を保険会社やFPに相談。遺言の内容と整合性を取った設計にすることが大事です。
📋 順序のポイント

「いきなり保険会社」や「いきなり遺言書」ではなく、まずは相続人と財産の整理から始めるのが効率的です。この段階で全体像が見えれば、その後の遺言・保険の設計もスムーズに進みます。

💡 既に生命保険に加入している方は、受取人をご確認ください

既に生命保険にご加入の場合、受取人指定の確認から始めるのもおすすめです。受取人の設定によって、保険金の扱いが大きく変わります。

既に亡くなった方が受取人になっていないか
受取人が複数の場合、配分は明記されているか
お孫さんを受取人にすると相続税が2割加算される(代襲相続のお孫さんを除く)

受取人の変更は保険会社で手続きできます。遺言書を作る前に確認しておくと、組み合わせの設計がスムーズです。

「遺言と保険、どっちが先?」というご質問をよくお聞きします。

私の答えはいつも「まずはご家庭の状況を整理してから」です。

どちらか先に進めてしまうと、後から「あれ、整合性が取れていない」と気づくことがあります。

たとえば、遺言で「自宅は長男」と決めた後に保険を設計したら、「長男以外への配慮が足りなかった」と気づいたり。逆に、保険を先に設計したら「遺言で書く分配と矛盾していた」など。

遺言と保険は「両輪」。片方だけ立派でも、もう片方が追いついていないと前に進みません。

ご家庭の状況を整理して、遺言と保険のバランスを見ながら設計していく——これが、結果的にいちばん効率的な進め方だと感じています。

「何から始めればいい?」「うちはどう組み合わせれば?」という段階でも構いません。

ご家庭の状況をお伺いしながら、一緒に整理させていただきます。

行政書士髙橋 大輔

当事務所のサポート内容

遺言と生命保険の組み合わせは複数の専門領域にまたがります。当事務所では行政書士業務を担当しつつ、必要に応じて他の専門家をご紹介しています。

🏛 行政書士(当事務所)
財産目録の作成サポート
戸籍収集・相続人の確定
相続関係説明図の作成
遺言書の起案サポート
📊 税理士(ご紹介)
相続税の試算
必要な納税資金の算出
税負担を抑える具体的な対策
🏦 保険会社・FP
具体的な保険商品の提案
保険金額・受取人の設計
保険契約の手続き

三重県鈴鹿市の行政書士事務所

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まとめ

まとめ
遺言書
「分け方を決める」→分け方のトラブルを防止
法的に分け方を確定させる
生命
保険
「現金を確保する」→納税・遺留分への準備
非課税枠500万円×法定相続人
基本は
両輪
片方だけでは不十分なケースがほとんど
遺言で「分け方」+保険で「現金」を同時に整備
第一歩
まずは相続人と財産の整理から
いきなり保険会社・遺言書ではなく、全体像の把握が先
【免責事項】
本記事は一般的な情報提供を目的としており、法的助言・税務助言・保険商品の推奨を行うものではありません。具体的な保険商品の選定は保険会社・FP、相続税の試算は税理士、遺言書の作成や財産・相続人の整理は行政書士など、それぞれの専門家にご相談ください。

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