はじめに
「遺言書を書いておけば安心」と思って作成したものが、いざ相続の場面で「法的に使えない」と判定されたり、かえって争いの火種になったりするケースが実務では後を絶ちません。
この記事では、実務現場で特に多い5つの誤解と、その裏に潜むリスク・対策を解説します。
5つの誤解
自筆証書遺言には民法第968条で定められた4つの要件(全文自書・日付・署名・押印)があります。「吉日」という日付・パソコンで書いた本文・押印漏れのどれか1つでも欠けると遺言書全体が無効になります。
対策:法務局保管制度(3,900円)を活用するか、公正証書遺言を選択する。作成後は専門家に形式確認を依頼する。
実務で最も多く危険な誤解です。当事者同士が良くても、その配偶者や周囲が権利を主張し始めるケースが多い。遺言がないことで「全員合意が必要な遺産分割協議(民法第907条)」が必要になり、ルール不在そのものが争いの引き金になります。
裁判所の統計でも遺産分割調停の約3割は遺産額1,000万円以下のケースで起きています。
公正証書遺言は形式不備による無効リスクはほぼゼロになりますが、内容まで万能ではありません。認知症が進んでいた場合の「遺言能力(民法第963条)」の争いや、不公平な分配による感情的対立は公正証書でも防げません。
対策:公正証書作成時の意思能力を示す記録(医師の診断書等)を残しておく。
遺言作成から相続発生まで長い時間が流れます。その間に財産を売却すると当該部分は撤回扱い(民法第1023条第2項)になり、相続人が変化すると内容が実態と乖離します。
対策:3〜5年に1度の定期見直しを推奨。財産の売却・取得があった際は必ず確認する。
日本の法律には遺留分(民法第1042条)という制度があり、配偶者・子・直系尊属には最低限の取り分が保障されています(兄弟姉妹には遺留分なし)。この権利を無視した遺言を書くと、死後に遺留分侵害額請求(金銭の支払い要求)が起き泥沼化します。
対策:各相続人の遺留分(遺産×1/2×法定相続分)を計算した上で分配設計をする。
遺言を機能させる3つの柱
まとめ
本記事は一般的な情報提供を目的としており、法的助言を提供するものではありません。遺言書の作成は専門家(行政書士・司法書士等)にご相談いただくことを推奨します。
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