はじめに
はじめに
自筆証書遺言は、紙とペンさえあれば費用をかけずに作れる遺言書です。「自分で書けそう」と思っている方も多いと思います。
ただ実際には、形式が整っていなかったという理由で無効になるケースが少なくありません。
死んでから無効だったとわかっても、もうどうにもなりません。
この記事では、作成の手順・成立要件・財産の書き方・法的効力を高める工夫・法務局保管制度・「相続させる」と「遺贈する」の使い分けまで、自分で書くために必要なことを詳しく解説します。
📋 この記事でわかること
・自筆証書遺言のメリット・デメリット
・作成の手順(推定相続人の確定〜保管まで)
・無効にならないための4要件・よくある無効パターン
・財産の書き方・含めるべき項目チェックリスト
・法的効力を高める3つの工夫
・法務局保管制度のメリット
・「相続させる」と「遺贈する」の使い分け
自筆証書遺言とは
STEP 1自筆証書遺言とは
「費用をかけずに自分で書きたい」という気持ちはよくわかります。ただ、自筆証書遺言には公正証書遺言にはないリスクがあります。まず特徴を正直にお伝えします。
✅ メリット
・費用がほぼかからない
・いつでも・どこでも作れる
・内容を誰にも知られずに作れる
・内容を自由に書き直せる
⚠ デメリット
・形式不備で無効になるリスクがある
・発見されない・隠蔽されるリスクがある
・相続発生後に裁判所での確認手続きが必要(法務局保管除く)
・内容の正確性を公証人が確認しない
作成の手順
STEP 2作成の手順
「よし、書こう」と思っていきなり清書しようとすると、ほぼ確実に書き直しが必要になります。実際にやってみると、思った以上に準備が必要なことに気づきます。
推定相続人の確定
現時点で誰が相続人になるかを把握します。配偶者・子・親・兄弟など、法律上の相続人を戸籍で確認しておきましょう。相続人の漏れがあると後のトラブルになります。
財産の洗い出しと分け方を決める
不動産・預貯金・有価証券・生命保険・ローンなどを一覧にします。誰に何を渡すかをこの段階で決めておきましょう。
下書きを作成する
パソコンや鉛筆で下書きを作ります。財産の特定・相続人の氏名・「相続させる」か「遺贈する」かの用語選択など、この段階で確認しておきます。
清書する(全文手書き)
消えないボールペンで全文を手書きします。修正テープは使用不可。書き間違えたら最初から書き直す方が確実です。
保管方法を決める
法務局への保管(3,900円)か自宅保管かを選びます。法務局保管の場合は申請に本人が出向く必要があります(→STEP8参照)。
成立要件とよくある無効パターン
STEP 3成立要件とよくある無効パターン
たった4つの要件ですが、これが意外と落とし穴だらけです。「そんなことで?」と思うような理由で無効になったケースが後を絶ちません。
①全文
自書
全文を手書きで書く
パソコン入力・代筆は不可。ただし財産の一覧表(財産目録)のみパソコン作成が認められています(2019年改正)。財産目録には必ずすべてのページに署名・押印が必要です。
②日付
年月日を具体的に書く
「令和○年○月○日」のように明確に。「吉日」「○月某日」は無効になります。複数の遺言書がある場合は日付の新しい方が有効になるため、正確な日付は特に重要です。
③署名
氏名を手書きで書く
戸籍上の氏名で書くのが望ましいです。通称・雅号は避けましょう。
④押印
押印する(認印でも可・実印が望ましい)
押印漏れは無効になります。署名の後に必ず押しましょう。
実際に「書いたけど無効だった」という相談で多いパターンです。どれも「まさかこれで無効になるとは」というものばかりです。
①
日付が「吉日」になっている
縁起を担いで「吉日」と書いてしまうケースが多いです。具体的な年月日がないと無効になります。
②
押印がない・署名だけで終わっている
「署名したから大丈夫」と思って押印を忘れるケースがあります。署名だけでは無効です。
③
一部をパソコンで作成している
財産目録以外の本文をパソコンで打ったり、名前だけ印刷したりすると無効です。本文は全て手書きが必要です。
④
訂正の方法が間違っている
修正テープや二重線だけでは無効になります。訂正箇所に押印し、欄外に「○字削除○字追加」と記載する必要があります。迷ったら書き直す方が確実です。
⑤
書いた時点で判断能力が低下していた
認知症が進んだ状態で書いた遺言書は、後から無効を争われるリスクがあります。「元気なうちに書いておく」ことが何より重要です。
2026.04.12
はじめに
はじめに
「費用がかからないし、自分で書けばいい」と思っている方は多いと思います。
確かに自筆証書遺言は手軽です。紙とペンさえあれば、今日からでも書けます。
ただ、手軽さの裏にはリスクがあり...
財産の書き方・含めるべき項目
STEP 4財産の書き方・含めるべき項目
形式が完璧でも、財産の書き方が曖昧だと「どの財産のことかわからない」として手続きが止まります。せっかく書いた遺言書が実行できない、という事態は避けたいですよね。
⚠ 曖昧な書き方の例
×「自宅を長男に相続させる」→ どの不動産か特定できない
×「できるだけ公平に分ける」→ 解釈で揉める原因になる
📋 不動産の書き方(推奨)
法務局で取得できる不動産の権利証明書(登記事項証明書)の記載通りに書きます。
例:「所在 三重県○○市○○町○番地、家屋番号 ○番、種類 居宅、構造 木造瓦葺2階建、床面積 1階○○.○○㎡ 2階○○.○○㎡」
📋 預貯金の書き方(推奨)
例:「○○銀行○○支店 普通預金 口座番号○○○○○○○ の預金全部」
📋 遺言書に含めるべき項目チェックリスト
表題 「遺言書」と明記する。ただのメモと間違われないようにするため
財産の特定 不動産・預貯金・有価証券などを特定できる情報で記載する
受け取る人の氏名・生年月日 「長男」などではなく、戸籍上の氏名と生年月日で特定する
「相続させる」か「遺贈する」か 相手が家族か家族以外かで使い分ける(STEP7参照)
遺言を実行してくれる人の指定 手続きをスムーズにするために指定しておく(STEP6参照)
予備的遺言 受け取る人が先に亡くなった場合の受け取り人を決めておく
付言事項(任意) 法的効力はないが、家族へのメッセージや分け方の理由を添えると残された家族が納得しやすくなる
2026.04.14
はじめに
はじめに
相続手続きや遺言作成を始めようとしたとき、「何がどこにあるか分からない」という状況が最大の障壁になります。財産目録はすべての相続対策の出発点です。
この記事では、財産の種類別の確認方法・見落としやす...
法的効力を高める3つの工夫
STEP 5法的効力を高める3つの工夫
ここからは「書いた後」の話です。形式が整っていても、後から「本人が書いたものではない」「書かされた」と争われるケースがあります。ひと手間かけておくだけで、証拠として残せます。
①
筆跡を対照できる文書を残しておく
日記・手紙・年賀状など、本人の筆跡が確認できる文書を残しておくと、遺言書が本人の自筆であることの証拠になります。
②
遺言書・封書・契印を実印で押印し、印鑑証明書と一緒に保管する
遺言書を封書に入れ、封じ目に実印で契印を押します。印鑑証明書と一緒に保管することで、本人が封入・押印したことの証明になります。
③
遺言を書いている状況を録画する
スマートフォンなどで、本人が自分の意思で書いている様子を録画しておくと、後から「書かされた」「判断能力がなかった」と争われた際の有力な証拠になります。
遺言を実行してくれる人を決めておく
STEP 6遺言を実行してくれる人を決めておく
遺言書を書いても、誰かが手続きをしてくれなければ意味がありません。
「誰が動いてくれるか」を決めておくだけで、残された家族の負担がぐっと減ります。
・家族の1人・行政書士など専門家のいずれでも指定できます
・家族間で揉める可能性がある場合は、第三者(専門家)への指定が有効です
・書き方の例:「遺言執行者として○○(昭和○○年○月○日生)を指定する」
「相続させる」と「遺贈する」の使い分け
STEP 7「相続させる」と「遺贈する」の使い分け
ここが一番迷うところだと思います。「相続させる」と「遺贈する」、どちらを使うかで手続きの手間も費用も変わります。間違えると取り返しがつかないので、しっかり確認してください。
「相続させる」
使える相手:法律上の家族(相続人)のみ
登記手続き:受け取る人が単独でできる
不動産取得税:かからない
登録免許税:評価額の0.4%
「遺贈する」
使える相手:籍を入れていないパートナー・知人・法人など家族以外にも使える
登記手続き:他の家族との共同申請が必要
不動産取得税:家族以外への場合は課税対象
登録免許税:評価額の2%(家族以外)
⚠ 使い分けのポイント
・法律上の家族(子・配偶者など)に渡す場合 → 「相続させる」(手続きが簡単・費用も安い)
・籍を入れていないパートナー・知人など家族以外に渡す場合 → 「遺贈する」しか使えない
・「相続させる」と書くべきところを誤って「遺贈する」と書くと、登記費用・税負担が増え手続きも複雑になる
📋 書き方の例
「第○条 遺言者は、後記不動産を長男 ○○(昭和○○年○月○日生)に相続させる」 ←長男が法律上の家族の場合
「第○条 遺言者は、後記不動産を内縁の妻 ○○(昭和○○年○月○日生)に遺贈する」 ←籍を入れていないパートナーは家族以外のため遺贈を使う
法務局に預ける保管制度の活用
STEP 8法務局に預ける保管制度の活用
せっかく書いた遺言書が、発見されなかったり捨てられたりしては意味がありません。3,900円でできる対策として、ぜひ検討してみてください。
2026.04.14
はじめに
はじめに
自筆証書遺言を自宅で保管すると、紛失・改ざん・発見されないというリスクがあります。2020年7月から施行された「遺言書保管制度」は、これらのリスクをまとめて解消できる制度です。
この記事では、制度の...
1
紛失・偽造・隠蔽のリスクがない
自宅保管だと発見されなかったり、家族に捨てられたりするケースもあります。
2
相続発生後の検認手続きが不要
通常の自筆証書遺言は相続発生後に家庭裁判所での確認手続きが必要ですが、法務局保管の場合は不要です。
3
費用は3,900円(1件)
住所地・本籍地または不動産の所在地を管轄する法務局に申請します。
当事務所でできること
当事務所でできること
ここまで読んで、こんな気持ちになっていませんか?
・思ったより複雑で、自分一人で書く自信がなくなってきた
・すでに書いたが、形式や内容が正しいか不安
・「相続させる」と「遺贈する」どちらを使えばいいか判断できない
そう感じたら、公正証書遺言をおすすめします。公証人が作成するため形式不備で無効になるリスクがほぼなく、より確実に家族に残すことができます。当事務所でご支援いたします。
🏛 行政書士(当事務所)
遺言書の内容案の作成サポート
財産目録の作成
公証役場との調整・証人立会い
必要書類の収集代行
⚖ 司法書士(ご紹介)
不動産の相続登記
(2024年4月より義務化・3年以内)
まとめ
まとめ
4要件
全文手書き・日付・署名・押印。1つでも欠けると無効。「吉日」「押印漏れ」が特に多い
財産
特定
不動産は権利証の通りに・預貯金は口座番号まで。「自宅を」だけでは特定できず実行不能に
用語
選択
家族には「相続させる」・家族以外には「遺贈する」。誤った用語使用で費用・手続きが増える
保管
制度
法務局保管で紛失・偽造なし・検認不要(費用3,900円)。自宅保管より安全
「書けそう」と思って始めても、細かいルールの多さに驚く方は少なくありません。不安なときは、作成前に一度専門家に相談することをおすすめします。
【免責事項】本記事は一般的な情報提供を目的としており、法的助言を提供するものではありません。個別の事情により手続きや結果が異なる場合がありますので、具体的なご相談は専門家(行政書士・司法書士等)にお問い合わせください。