はじめに
「自分に万が一があったとき、この子はどうなるんだろう」——ペットを飼っている方なら、一度は考えたことがあるのではないでしょうか。
特に、お子さんがいなかったり、ご家族が遠方にいたりすると、不安は大きくなります。
この記事では、難しい法律の話よりも、「実際に何を準備すればいいのか」を中心に、ペットの将来を守るための現実的な備え方を、三重県鈴鹿市の行政書士がお伝えします。
— こんなご相談がありました —
先日、独居の女性Cさん(仮名・70代)が事務所にいらっしゃいました。ご家族は遠方で、保護猫の「ミミちゃん」(仮名)と二人暮らしのご相談者さまです。
「もし私が倒れたら、この子はどうなるんだろう…」——ミミちゃんは8歳の女の子。動物病院では一度の通院で1〜2万円、入院になれば10万円を超えることもあります。
「遠くの家族に押し付けるわけにもいかないし、施設に預けるにもお金がいる…」そんな不安を抱えてご相談に来られました。Cさんのように、ペットの将来を心配される方は決して少なくありません。
ペットの「これから」で問題になる3つのこと
ペットの行く末を考えるとき、現実には3つの問題が立ちはだかります。
ペット不可のマンションに住んでいるご家族、アレルギーがあるご家族、共働きで世話の時間が取れないご家族——「うちでは難しい」となってしまうケースは少なくありません。「家族なら引き取ってくれるはず」と漠然と考えていると、いざという時に行き場がなくなってしまうことも。
小型犬や猫の飼育費は年間20〜30万円程度。大型犬や持病があると、年間50万円を超えることもあります。残りの寿命を考えると、数百万円規模の費用が必要になります。引き取り手に「あとはよろしく」と任せるだけでは、相手の負担が大きすぎます。
「お金だけ受け取って、世話は疎かに…」そんな心配が頭をよぎる方もいらっしゃるでしょう。亡くなった後のことなので、ご自身で確認はできません。だからこそ「ちゃんと守られる仕組み」を作っておく必要があります。
📌 参考:日本の法律上、ペットは「物」として扱われる
日本の法律上、ペットは「動産」(物)として扱われます。家具や預金と同じ「相続財産」の一つとして相続人に引き継がれる、という建前です。指定がなければ、その後の運命は相続人の善意に委ねられてしまうのが現実です。だからこそ、生きているうちに準備をしておく意味があるのです。
ペットを守るための現実的な備え方
先ほどの3つの問題に対応する形で、備え方も3つに整理できます。
ペットの将来を守るうえで、何よりも大切なのは「誰に託すか」を決めておくことです。引き取り先には、こんな選択肢があります。
👨👩👧 ご家族・ご親戚
最も自然
一番身近な選択肢。ただし、ペット飼育可能な住環境か、アレルギーがないか、世話の時間が取れるかは必ず事前に確認を。「家族なら何とかしてくれる」と思い込まないことが大切です。
🤝 信頼できるご友人・知人
関係性が大切
「うちのペットも家族」と思ってくれる方が候補です。日頃からペットと触れ合う機会があり、性格や習慣を知っている方ほど安心。継続的な関係性を保てる相手かどうかが重要です。
🏛 動物愛護団体・NPO法人
里親探しが基本
里親探しをサポートしてくれる団体です。一時的に保護し、新しい飼い主を探す形が基本。団体ごとに方針や条件が異なるため、生前から問い合わせて受け入れ可否を確認しておくと安心です。寄付やボランティアで応援している団体なら、相談もしやすくなります。
🏠 老犬・老猫ホーム(終生飼育施設)
費用がかかる
高齢ペット専門の終生飼育施設です。月額数万円〜の継続費用、または一時金(数十万円〜数百万円)で終生引き受けてくれる形が一般的。事前見学で施設の雰囲気や飼育環境を確認しておくことをおすすめします。
📦 ペット信託サービス事業者
資金管理込み
飼育費用の管理と、新しい飼い主・施設の手配までまとめてサポートするサービス。司法書士や専門業者が運営しています。資金管理から飼育委託まで一括で任せられる安心感があります(詳細は後述の「ペット信託」参照)。
引き取り手を選ぶときのチェックポイント
・ペットが飼える住環境か(マンション規約等)
・アレルギーや既往症がないか
・経済的・時間的に飼育を続けられるか
・お子さんや他のペットとの相性は問題ないか
・必ず事前に承諾を得ておく
⚠ 「予備の引き取り手」も必ず決めておく
第一希望の方が、ご自身の病気や事情で引き取れなくなることもあります。第二・第三の選択肢を用意しておきましょう。
引き取り手が決まったら、次は飼育費用をきちんと渡せる仕組みを作ります。「あとはよろしく」では相手の負担が大きすぎますし、約束した飼育を続けてもらいにくくなります。
飼育費用の見積もり方
① ペットの現在の年齢から残りの寿命を推定
(犬猫の平均寿命は15〜16歳が目安)
② 年間費用 × 残り年数で総額を計算
③ 緊急医療費として50万円程度のバッファを加える
📝 計算例:8歳の猫の場合
・残り寿命の目安:約8年(猫の平均寿命15〜16歳)
・年間費用:25万円程度
・緊急医療費バッファ:50万円
→ 合計:25万円 × 8年 + 50万円 = 250万円
この金額を引き取り手にお渡しできるように準備しておきます。
引き取り手とお金が決まっても、「約束が守られるか」が最後の心配です。これを担保する方法もあります。
約束を守ってもらうための工夫
・監督役を立てる(信頼できる方や行政書士に依頼)
・飼育条件を書面に明記(餌の種類、通院方法など)
・違反があった場合の対応も決めておく(財産の取り戻しなど)
※具体的な仕組みは、次のセクションでご説明する法律的な手段を使って実現します。
法律的な仕組み(補足)
ここまでお話しした「引き取り手・費用・担保」を実際に形にするには、いくつかの法律的な手段があります。難しい話なので、まずは大まかな違いをご紹介します。どれが合っているかは、ご状況によって変わりますのでご相談ください。
📜 負担付遺贈
遺言で「この財産を渡す代わりに、うちのペットの世話をしてほしい」と指定する方法です。世話をしてもらえない場合は、家庭裁判所に遺言の取り消しを請求することもできます。当事務所で遺言書作成のサポートが可能です。
📝 死因贈与契約
飼い主と引き取り手の間で「私が亡くなったら、この資金を渡すのでペットを飼ってください」と契約を結んでおく方法。「契約」なので、引き取り手と事前に合意ができるのが安心ポイントです。当事務所で契約書作成のサポートが可能です。
🤝 ペット信託
信頼できる方(受託者)に資金を託し、ペットのために使ってもらう仕組み。生前から始められるので、認知症などのリスクにも対応できるのが強みです。信託契約の作成は司法書士の業務領域ですので、必要に応じてご紹介します。
— 髙橋からのメッセージ —
「最後まで、この子の家族でいたい」
ペットのご相談に来られる方は、皆さま、心からその子のことを大切に想っていらっしゃいます。「家族の一員」「子どものような存在」と、まっすぐおっしゃる方ばかりです。
「私がいなくなった後も、この子が安心して暮らせるように」
「最後まで責任を持ちたい」
——そんな想いを抱えて、お話しに来てくださいます。
ペットを大切にされている方ほど、「もしも」を考えるのは辛いことかもしれません。
でも、その想いを形にして残しておくこと自体が、深い愛情の表れだと、私は思っています。
「うちの子の場合、どう備えればいい?」
——その段階でのご相談で結構です。
ご状況を伺いながら、その子に合った形を、ご一緒に考えさせてください。
大切な家族のことですから、納得のいく形で備えていきましょう。
よくあるご質問
Qペットに財産を直接遺すことはできますか?▼
A
残念ながら、できません。日本の法律上、ペットは「物」として扱われるため、財産を受け取る側にはなれません。代わりに、引き取り手の方に「ペットの世話をすること」を条件として財産を渡す、という形を取ります。
Q引き取り手のあてがありません。どうしたらいいですか?▼
A
動物愛護団体、老犬・老猫ホーム、終生飼育を引き受ける施設などの選択肢があります。施設によって費用や条件は異なりますので、見学や事前相談で「実際に預けられる場所」を確認しておくと安心です。当事務所でも、お客様の状況に合った選択肢のご相談に応じています。
Q引き取り手が約束を守らなかったら、どうなりますか?▼
A
遺言(負担付遺贈)の場合は、家庭裁判所に遺言の取り消しを請求することができます。死因贈与契約の場合は、契約違反として渡した財産の返還を求めることになります。違反を防ぐためにも、第三者である監督役(遺言執行者など)を立てておくのが効果的です。
Qペット信託と遺言、どちらがいいですか?▼
A
ご状況によって異なります。
・遺言・死因贈与契約:亡くなった後のことを準備したい方向け。比較的シンプル。
・ペット信託:生前から認知症など飼育不能のリスクにも備えたい方向け。仕組みが複雑なぶん、対応範囲が広い。
ペット信託は司法書士の業務領域ですので、必要に応じてご紹介します。
Q遺言や契約書の作成費用はどれくらいですか?▼
A
事案により変動しますので、まずは無料相談でご状況を伺ったうえで、お見積もりをお出しします。公正証書遺言の場合は、別途公証人の手数料がかかります(財産額により数万円〜)。
Qまだ若いペットですが、今から準備するのは早いですか?▼
A
むしろ、若くて元気なうちに準備しておくほうが、落ち着いて選択肢を比較できます。万が一の事故や病気は、年齢に関係なく起こります。「ペットとの暮らし」を計画する一部として、早めに考えておくことをおすすめしています。
当事務所のサポート
当事務所では、三重県内・近隣県にお住まいの方を中心に、ペットの将来を守るためのご相談をお引き受けしています。「うちの子のことだから、早めに考えておきたい」——そんなお気持ちに、丁寧に寄り添います。
📋 当事務所がサポートできること
・負担付遺贈の遺言書作成(公証役場と連携)
・死因贈与契約書の作成
ペット信託など、より複雑な仕組みが必要な場合は、信頼できる司法書士・弁護士をご紹介します。窓口は当事務所にひとつ。あちこちに相談に行く必要はありません。
🏛 行政書士(当事務所)
負担付遺贈の遺言書作成
死因贈与契約書の作成
遺言執行者の引き受け
⚖ 司法書士
ペット信託の契約書作成
不動産関連の手続き
まとめ
引取り
手
「誰に託すか」を必ず決めておく
事前承諾が必須。予備の引き取り手も忘れずに
費用
飼育費用×残り寿命+緊急医療費バッファ
小型犬・猫は年間20〜30万円が目安
担保
監督役を立てて、約束を守ってもらう仕組みを
飼育条件を書面で明記、違反時の対応も決めておく
早めに
備える
負担付遺贈・死因贈与契約・ペット信託から状況に合わせて
遺言・契約は行政書士、信託は司法書士の領域
【免責事項】本記事は一般的な情報提供を目的としており、法的助言を提供するものではありません。個別の事情により手続きや結果が異なる場合がありますので、具体的なご相談は専門家にお問い合わせください。