はじめに

「親の終活、そろそろ何かしておかないと…」と思いながらも、何をすればいいのか調べるほどに言葉が増えていって——という方が、ご相談の中でも少なくありません。

「遺言書」「任意後見」「家族信託」「死後事務委任」。どれも大切な備えですが、それぞれ対象とする時期も、お願いする相手も、目的も違います。一緒に扱われていることが多いために、かえって整理しにくくなっているのかもしれません。

一人暮らしの親御さんの老後と相続を支える仕組みは、大きく6つに整理できます。「全部やらないといけない」ということではなく、親御さんの状況やご家族の体制に合わせて、必要なものを組み合わせていくものです。

この記事では、その6つを順に整理しています。一人暮らしのご両親の相続対策について、まず全体感を知りたい方は、あわせてこちらもご参照ください。

📋 この記事でわかること
親の老後で起きる「4つの場面」と必要な備え
6つの契約・仕組み(見守り/財産管理/任意後見/死後事務委任/公正証書遺言/遺言執行)
ご家族の状況別・現実的な組み立て方
2025年10月から始まった公正証書遺言のデジタル化
当事務所がサポートする範囲と、他の専門家との連携

親の老後で起きる「4つの場面」と必要な備え

「6つの契約」と言われても、いきなり並べられるとピンと来ないですよね。少し遠回りに思えるかもしれませんが、まずは親御さんの老後で起きる「場面」から整理してみましょう。

一人暮らしの親御さんの老後では、大きく分けて4つの場面があります。そして、それぞれの場面に、対応する備えがあります。

場面どんなとき・対応する仕組み

日常の見守り
お元気だけれど、子どもが遠方にいて様子を頻繁に確認できない。詐欺被害や体調変化の兆しを早めにキャッチしたい時期
→ ① 見守り契約

体が弱る段階
入院や入所で、自分で銀行に行けない・公共料金の支払いが滞るおそれ。判断能力はまだあるけれど、体が動きにくい時期
→ ② 財産管理契約

判断能力の低下
認知症が進み、契約や財産の管理を自分で判断するのが難しくなった時期。預金引き出しや施設入所の手続きが止まる
→ ③ 任意後見契約

お亡くなりになる
葬儀・各種解約・住まいの片付けが必要。そして相続財産を、決めておいた通りに承継する
→ ④ 死後事務委任契約
→ ⑤ 公正証書遺言
→ ⑥ 遺言執行
この4つの場面は、必ずしも順番通りに来るわけではありません。たとえば、お元気な状態からそのままお亡くなりになる方もいらっしゃいます。「どの場面に備えるか」は、親御さんの年齢・健康状態・ご家族の状況によって変わります。

6つの契約・仕組みを順に整理

ここからは、6つの仕組みを一つずつ見ていきます。「全部やる」のではなく、「自分の家族にはどれが要りそうか」を考えながら読んでみてください。

👆各項目をタップすると、詳しい説明が開きます

1👁 見守り契約 | 定期的な「つながり」を仕組み化する

親御さんがお元気なうちから、月1回の電話や訪問など、定期的な見守りをお願いする契約です。日々の様子を把握できるので、判断能力の低下や体調の変化を早めにキャッチできます。詐欺や悪徳商法のリスクを下げる効果もあります。

受任者は弁護士・司法書士・行政書士・NPO法人などが多く、月額制または訪問回数制が一般的です。費用は数千円から数万円と幅があります。

💡 ポイント:見守り契約には、財産管理や法律行為の代理権限はありません。あくまで「様子を見る」契約です。子どもが頻繁に帰省できる場合は、必ずしも必要ではありません。

2💴 財産管理契約 | 判断能力はあるけれど体が動きにくい時期に

親御さんの判断能力はしっかりしているものの、入院や入所などで「ご自身で銀行や役所に行くのが難しい」状態をカバーする契約です。預金の入出金・公共料金の支払い・不動産の管理などを、受任者にお願いできます。

後で出てくる任意後見契約は、判断能力が低下してはじめて効力が発生します。それまでの「判断能力はあるけれど自分では動けない期間」を、この財産管理契約でつなぐ、というイメージです。

💡 ポイント:銀行の「代理人カード」や「予約型代理人サービス」で足りるケースも多いです。本格的な財産管理契約は、入出金以外の手続き(不動産・施設入所等)まで広く委ねたい場合に検討します。

3🛡 任意後見契約 | 判断能力が低下したときの「自分で選ぶ後見人」

親御さんがお元気なうちに、「将来、認知症などで判断能力が低下したら、この人に後見人になってもらう」とあらかじめ決めておく契約です。判断能力が実際に下がった段階で、家庭裁判所が任意後見監督人(後見人を監督する立場の人)を選任し、はじめて効力が発生します。

判断能力が低下してから家裁が決める「法定後見」と違い、後見人を事前にご自身で選べるのが大きな違いです。

⚠ 注意:任意後見契約は累計で約12万件結ばれていますが、実際に効力が発生したのは約3%にとどまります。「結んだけれど使われない」ケースが多いのが現状です。本格的に活用するには、見守り契約とセットで、判断能力低下のタイミングを見極める体制が大切になります。
💡 ポイント:効力発生後は、任意後見監督人への報酬(月額数千円〜数万円程度・家裁が決定)が継続的にかかります。

4📋 死後事務委任契約 | 葬儀・解約・片付けをお願いする

親御さんがお亡くなりになった直後の「事務手続き」を、受任者にお願いする契約です。具体的には、こんな範囲が対象になります。

・葬儀・火葬・納骨に関する手配
・行政官庁への各種届出(健康保険証・年金など)
・公共料金・各種サブスクの解約
・施設や賃貸住宅の退去・遺品整理
・SNSやデジタル契約の閉鎖手続き

重要なのは、財産の分配や相続登記は対象外だということです。「誰に何を渡すか」は遺言書、「不動産の名義変更」は司法書士の領域。死後事務委任契約は、あくまで葬儀から事務手続きまでの「実務」を担う契約になります。

💡 ポイント:子どもが遠方で「葬儀のためにすぐ駆けつけられない」「平日の手続きが難しい」場合に、第三者の受任者を入れる選択肢があります。

5📜 公正証書遺言 | 6つの中で最も重要な「財産の地図」

「誰に何を渡すか」を、公証人が関与して作成する遺言書として残しておくものです。原本が公証役場に保管されるため、紛失・偽造・形式不備のリスクがほとんどありません。

他の5つの契約と違って、遺言は「単独行為」(契約ではない)です。親御さんお一人の意思で作成できます。「子どもには言いにくいけれど、自分で備えたい」という方に向いています。

📰 2025年10月から始まった「公正証書遺言のデジタル化」
これまで公証役場まで足を運ぶ必要があった公正証書遺言が、Web会議システムでのリモート作成に対応するようになりました。原本も電子データとして保管されます。高齢の親御さんや、遠方在住の証人候補のご家族にとって、ハードルがぐっと下がっています。
💡 ポイント:6つの中で「何から始めればいいか分からない」という方に、最初におすすめしているのが公正証書遺言です。「誰に何を残すか」が決まれば、他の契約の必要性も見えてきます。

6🖋 遺言執行 | 遺言の内容を実際に動かす役割

遺言書を作っただけでは、実際に財産が動くわけではありません。戸籍を集めて相続人を確定し、銀行口座を解約し、不動産の名義変更につなぐ——こうした実務を担うのが「遺言執行者」です。遺言書の中で、あらかじめ指定しておきます。

遠方にお住まいの子ども世代にとって、遺言執行者の存在は心強い味方になります。執行者が窓口になって動いてくれるので、何度も帰省しなくても、相続手続きが粛々と進んでいきます。

💡 ポイント:遺言執行者には家族の中の誰かを指定することもできますが、戸籍収集や金融機関とのやりとりに慣れた専門家を指定すると、ご家族の負担が大きく減ります。

公正証書遺言と遺言執行をセットで検討したい方へ

当事務所では、文案の検討・必要書類の収集・公証役場との調整・当日の証人立会いから、遺言執行者の引き受けまで一括でサポートします。

遺言書作成サポートの詳細を見る →

全部必要?組み立て方の考え方

「6つもあるのか…」と気が遠くなってしまった方も、安心してください。すべてが必要な家族はそう多くありません。子どもがいるかどうか、近くにいるかどうか、兄弟姉妹の関係などで、現実的な組み合わせは変わってきます。

代表的な3つのパターンをご紹介します。

ご家族の状況よくある組み合わせ
A. 子どもが近くに住んでいる
日常の見守りや事務手続きは家族でカバーできる。財産の承継だけ整理しておきたいパターン。
⑤ 公正証書遺言
⑥ 遺言執行
B. 子どもが遠方/忙しい
何かあった時にすぐ駆けつけられない不安がある。判断能力低下時の備えも欲しいパターン。
① 見守り
③ 任意後見
⑤ 公正証書遺言
⑥ 遺言執行
C. 親に頼れる家族が少ない
子どもが一人っ子で遠方、または親族と疎遠。葬儀や事務手続きも家族だけでは難しいパターン。

①〜⑥

(5点〜6点セット)
「まず一つ」から始めるなら、公正証書遺言から
6つを一度に整えるのは大変です。実務では、まず⑤公正証書遺言と⑥遺言執行を整え、その後、親御さんの体調や状況を見ながら、必要に応じて他の契約を追加していく——という進め方が現実的です。

親御さんが、今日も一人で買い物に出かけている。電話では「元気よ」と言うけれど、最後に顔を見たのはいつだったか

——そんなことを、ふと考える瞬間はありませんか。

「何かあってからでは、もう間に合わない備えがある」

遺言書も、任意後見も、親御さんがご自身の意思でサインできるうちにしか、準備できません。

「縁起でもない話をするのは気が引けて…」という方も多いです。

でも、ご相談に来られた方から後でよく聞くのは、

「もっと早く話し合っておけばよかった」

という言葉です。

何から切り出せばいいか分からなくても、大丈夫です。

まずお話を聞かせてください。

親御さんへの伝え方も含めて、一緒に考えていきましょう。

行政書士髙橋 大輔

当事務所のサポートと、各専門家の役割

6つの仕組みは、それぞれ得意とする専門家が分かれています。当事務所の対応範囲と、信頼できる連携先を整理しました。

仕組み当事務所の対応
① 見守り契約
対応する専門家・事業者をご紹介
② 財産管理契約
対応する専門家・事業者をご紹介
③ 任意後見契約
対応する専門家・事業者をご紹介
④ 死後事務委任契約
対応する専門家・事業者をご紹介
⑤ 公正証書遺言
当事務所でサポート
⑥ 遺言執行
当事務所で引き受け

当事務所では、6つのうち⑤公正証書遺言の作成サポート⑥遺言執行者の引き受けを本業としてお取り扱いしています。それ以外の4つの契約については、内容に応じて対応する専門家や事業者(司法書士・弁護士・社会福祉協議会・対応事業者など)をご紹介します。

「どこから手をつければ良いか分からない」段階でも構いません。お話を伺ったうえで、ご家族に必要な仕組みを整理させていただきます。初回相談は無料です。

🏛 行政書士(当事務所)
公正証書遺言の作成サポート
遺言執行者の引き受け
財産目録・戸籍収集
遺産分割協議書の作成
⚖ 司法書士(ご紹介)
家族信託の設計
不動産の相続登記
📊 税理士(ご紹介)
相続税の試算・申告
準確定申告

三重県鈴鹿市の行政書士事務所

公正証書遺言・遺言執行のご相談を承っております

初回相談無料・出張対応可

対応業務・費用・対応エリアを確認する →無料相談のお問い合わせはこちら →LINEで無料相談する →

お電話・メール・LINEにて受付中

よくあるご質問
Q. 6つすべて整えないと、いざという時に困りますか?

いいえ、すべて必要なご家族のほうが少ないです。お子さんが近くにいらっしゃれば、見守り・財産管理・死後事務委任はご家族で対応できることが多く、公正証書遺言と遺言執行だけで十分なケースもあります。ご家族の状況に合わせて、必要なものを選ぶ考え方をおすすめします。

Q. 任意後見契約と家族信託、どちらがいいですか?

目的によって選び方が変わります。任意後見は「判断能力が低下した後の生活・財産全般のサポート」を、家族信託は「特定の財産(自宅・収益不動産など)の管理・承継」を主な目的とします。家族信託の設計は司法書士・弁護士の領域ですので、ご検討の際は信頼できる先をご紹介します。

Q. 親に遺言の話を切り出しにくいのですが、どう伝えればいいですか?

いきなり遺言の話をすると、親御さんが構えてしまうことがあります。「財産がどこに何があるか、いざという時に分からないと困るから、ノートに整理してほしい」という財産目録の話から始めると、自然に話が広がりやすくなります。ご相談時にも、こうした切り出し方の工夫をお伝えしています。

Q. 公正証書遺言のデジタル化で、何が変わりましたか?

2025年10月1日から、要件を満たせばWeb会議システム経由で公正証書遺言の作成手続きを進められるようになりました。原本も電子データで保管されます。すべてがオンラインで完結するわけではなく、公証人が必要と判断した場合は対面が求められることもありますが、公証役場への移動が難しい親御さんにとって選択肢が広がりました。

Q. 任意後見契約を結んでも、結局使われないと聞きました。本当ですか?

実際、累計で約12万件結ばれている任意後見契約のうち、効力が発生したのは約3%にとどまります。判断能力低下のタイミングを誰も見極めなかったり、家庭裁判所への申立てが煩雑だったりすることが、活用されにくい理由の一つです。見守り契約と組み合わせて、判断能力の変化を継続的にチェックする体制を整えると、活用につながりやすくなります。

Q. 遠方の親のことでも相談できますか?

はい。当事務所は三重県鈴鹿市を拠点としていますが、お電話・メール・LINE・オンライン面談での対応が可能です。出張でのご訪問も承っています。お住まいの地域によって対応範囲が変わる場合は、お問い合わせ時にご案内します。

Q. 親が認知症になってからでも、間に合いますか?

判断能力が大きく低下してからは、遺言書も任意後見契約も新たに作ることができなくなります。その段階では、法定後見(家庭裁判所が後見人を決める制度)の利用が検討されます。お元気なうちにできることと、判断能力が下がってから検討すべきことは大きく異なるため、お早めにご相談いただくのが安心です。

まとめ
場面で
整理
親の老後は「日常の見守り」「体が弱る段階」「判断能力の低下」「お亡くなりになる」の4場面に分かれる
6つの
仕組み
見守り/財産管理/任意後見/死後事務委任/公正証書遺言/遺言執行を、場面に合わせて組み立てる
必要
なもの
家族構成・住んでいる距離・親族関係で「必要なもの」は変わる。すべて整える家族のほうが少数派
まず
遺言
迷ったら公正証書遺言+遺言執行から。2025年10月のデジタル化でハードルが下がっている
専門家
連携
遺言・遺言執行は当事務所、家族信託・相続登記は司法書士、相続税は税理士。他の契約は内容に応じて対応する専門家・事業者にお繋ぎ

【免責事項】本記事は一般的な情報提供を目的としており、法的助言を提供するものではありません。個別の事情により手続きや結果が異なる場合がありますので、具体的なご相談は専門家にお問い合わせください。記載内容は2026年6月時点の情報に基づきます。

《 関連記事 》