はじめに

「兄弟と何年も連絡が取れていない」「子どもが家を出てから音信不通」——そんなご家庭、実は少なくありません。

相続人の中に行方不明の方が一人でもいると、ほかの相続人みんなが「こう分けよう」と合意できていても、遺産分割協議が成立せず、相続手続きが進められなくなってしまいます

この記事では、行方不明の相続人がいる場合の対応、放置するとどうなるか、そして遺言で備えておくことの大切さを、三重県鈴鹿市の行政書士が解説します。

— こんなご相談がありました —

先日、Aさん(仮名)が事務所にいらっしゃいました。お父様が亡くなり、相続人はお子さん3人。ところが、次男のBさんが20年以上前に家を出てから、誰も連絡先を知らない状態だったのです。

ご実家の名義変更も、銀行口座の解約も進められず、半年が経ってもどうしていいかわからない——。Aさんはそうおっしゃっていました。

「弁護士さんに頼むほどなのか…でも放っておくわけにもいかない」——そんな迷いの中で、ようやく一歩を踏み出してくださったご相談でした。ご家族の中に行方不明の方がいる相続は、実は珍しいことではありません。

行方不明の相続人がいると、何が起きるのか

相続が起きると、遺言書がない場合は、相続人みんなで話し合って財産の分け方を決める(これを「遺産分割協議」と呼びます)のが原則です。預金の解約や不動産の名義変更、株式の移転など、どの手続きにも相続人全員の署名と実印が必要になります。

⚠ 行方不明の方が1人いると、手続きが止まってしまいます
他の相続人が全員合意していても、行方不明の方の署名と実印がそろわなければ、預金の解約も不動産の名義変更も進められません。遺産分割協議は、相続人全員が参加してはじめて成立する手続きとされているからです。

「とりあえずそのうち連絡が来るだろう」と先送りにしているうちに、別の相続人が亡くなって相続関係が複雑になり、収拾がつかなくなるご家庭もあります。

行方不明者がいる場合の対応の進め方

「行方不明」といっても、ご事情はさまざまです。長年連絡が途絶えているだけのケースもあれば、住所すら分からないケースもあります。状況に応じて、段階を踏んで進めていきます。

対応の流れ(4ステップ)

1
戸籍・附票で住所を特定
本籍地から戸籍の附票を取り寄せて、現在の住所を確認します
行政書士
対応

2
連絡を試みる
お手紙でご連絡。応答がなければ内容証明郵便も検討
行政書士
対応

▼ 連絡が取れない場合 ▼

3
不在者財産管理人の選任
家庭裁判所に申立て。数か月+予納金30〜100万円程度
弁護士
司法書士

または

4
失踪宣告(7年以上生死不明の場合)
家庭裁判所に申立て。確定まで1年以上
弁護士
司法書士
※当事務所では戸籍・附票の取得や連絡サポートまで対応可能。
裁判所手続き(③④)が必要な場合は信頼できる弁護士・司法書士をご紹介します。

① 戸籍と附票で住所を特定する

まずは現在の住所を確認するところから始めます。確認方法は、主に2つあります。

戸籍の附票
本籍地の市区町村に請求します。住所異動の履歴がすべて記録されているため、追跡しやすいのが特徴。相続手続きを理由に行政書士が代理取得できます
住民票
現住所の市区町村に請求します。現在の住所のみがわかります(過去の異動履歴はわかりません)。

どちらでも住所は確認できますが、住所変更の履歴を辿るなら戸籍の附票のほうが追跡しやすく、実務では附票が使われることが多くなっています。

② 連絡を試みる

住所がわかったら、まずはお手紙でご連絡を取ります。長年連絡が途絶えていた相手の場合、いきなり電話するよりも、お手紙のほうが相手も心の準備ができます。

お手紙に書くと良いこと
・相続が発生したこと(亡くなった方のお名前・続柄)
・遺産分割協議への参加をお願いしたい旨
・相手を責めず、淡々と事実を伝える
・連絡先(電話・メール・住所)を必ず明記
・返信用封筒を同封すると返信率が上がります

何度か連絡しても応答がない場合は、内容証明郵便で公式に通知する方法もあります。内容証明郵便は「いつ・誰が・何を伝えたか」を郵便局が証明してくれる仕組みで、相手に「対応しないと不利益があるかもしれない」というプレッシャーを与える効果も期待できます。

それでも応答がない、あるいは受取拒否される場合は、次のステップ(不在者財産管理人の選任)に進むことになります。当事務所では、お手紙の文案作成や内容証明郵便の準備もお手伝いできます。

③ それでも連絡が取れない場合:「不在者財産管理人」を立てる

附票でも所在がわからない、住所はわかっても本人と連絡が取れない——そんな場合、家庭裁判所に「不在者財産管理人」(行方不明の方の代わりに財産を管理する人)の選任を申し立てます。

家庭裁判所が選んだ管理人が、行方不明の方の代わりに話し合いに参加し、その方の取り分を管理してくれる仕組みです。

注意点
・申立てから選任まで数か月かかる
・遺産分割協議への参加には別途家庭裁判所の許可が必要
・申立て手続きは弁護士・司法書士の業務領域
費用の目安
・申立て手数料(収入印紙):800円
・郵便切手代:数千円程度
予納金:30万〜100万円程度(管理する財産の状況による)
・専門家費用:別途(依頼する場合)
※予納金は不在者の財産管理に充てられ、残額は最後に申立人へ返還されます。

④ 長期間生死不明の場合:「失踪宣告」を申し立てる

7年以上生死が不明な場合は、家庭裁判所に「失踪宣告」(法律上で亡くなったと扱う制度)を申し立てる方法もあります。失踪宣告がされると、その方は法律上「亡くなった」ものとして扱われ、その方のお子さんや配偶者が代わりに話し合いに参加することになります。

注意点
・申立てから確定まで1年以上かかることが一般的
・申立て手続きは弁護士・司法書士の業務領域
・親族関係の整理など、慎重な判断が必要

放置で起こる「数次相続」のリスク

「いつかなんとかしよう」と思っているうちに、ほかの相続人が亡くなってしまうことがあります。そうすると、新しい相続がさらに重なって発生してしまいます。これを「数次相続」と呼びます。

⚠ 放置するほど、相続人は増えていきます
最初は数人だった相続人が、放置している間に十数人、数十人に膨れ上がることもあります。会ったこともない遠い親戚が相続人として加わると、話し合いはさらに難しくなります。

また、2024年4月から不動産の相続登記が義務化されました。3年以内に登記しないと10万円以下の過料の対象になります。「放置すれば法的な義務違反になる」というプレッシャーも、年々強くなっているのが現状です。

遺言で備えれば、トラブルを避けられる

ここまでは「すでに行方不明の方がいる場合」の対応をお話ししました。続いては、「そうなる前に備えておきたい」という方向けに、遺言でどんなことができるのかをご紹介します。

📝 遺言があれば、遺産分割協議そのものが不要に

遺言で「誰に何を渡すか」をあらかじめ決めておけば、相続人全員での話し合い(遺産分割協議)を行う必要がなくなるケースが多くなります。

さらに遺言執行者(遺言の内容を実行する役割の人)を指定しておけば、その方が中心になって不動産の登記や預金の解約を進められます。行方不明の相続人がいても、手続きが止まりにくくなります。

遺言があると、こう変わります
・全員の署名・実印が不要になる
・遺言執行者が単独で手続きを進められる
・不在者財産管理人の選任申立てが原則として不要になる
・申立て費用(数十万円)と時間(数か月〜1年以上)を節約できる

🌟 行方不明者が「兄弟姉妹」の場合は特に効果的

相続人が兄弟姉妹(や甥・姪)の場合、その方々には遺留分(最低限の取り分)がありません

そのため、遺言で「全財産を配偶者に渡す」「特定の人に渡す」と書いておけば、行方不明の兄弟姉妹を経由せずに財産を渡したい方へ届けることができます。

※お子さんや親が行方不明の場合は、遺留分への配慮が別途必要です。

遺言を作る前に、整理しておきたいこと

遺言を作るにあたって、いきなり公証役場に行くわけではありません。まずはご家族の状況を整理することから始まります。

📋 ご相談前に整理しておくとスムーズなこと
① 推定相続人の状況
どなたが相続人になるか、現在の連絡状況はどうか。連絡が取りにくい方がいるかどうかを整理しておきます。
② 財産の内容
不動産、預貯金、有価証券など、どんな財産がどれくらいあるかを大まかにでも把握しておきます。
③ 遺言執行者の候補
遺言を実行してくれる方をどなたにお願いするか。ご家族の中の信頼できる方、または行政書士などの専門家が候補になります。

— 髙橋からのメッセージ —
「家族には、できるだけ穏やかに過ごしてほしい」

遺言のご相談に来られる方は、皆さま、ご家族のことを心から大切に想っていらっしゃいます。

「私が逝った後、家族が揉めないように」

「残された人たちが、穏やかに暮らせるように」

——そんな想いを抱えて、お話しに来てくださいます。

遺言書というのは、財産を分けるための書類というよりも、ご家族への「最後のメッセージ」だと、私は思っています。

「みんなで助け合って生きていってね」

「悲しみで足を止めないでね」

——そういった気持ちを、形にして残せる手段です。

ご家族の中に長く連絡が取れていない方がいる場合、その不安が遺言を書く動機になることもあります。「あの子のことで、ほかの家族に迷惑をかけたくない」と。その想いを、文字にして残しておけます。

不在者財産管理人の申立てや失踪宣告の手続きについては、信頼できる弁護士・司法書士をご紹介します。私にできるのは、国内の遺言書作成や書類整備までです。

「何から始めれば…」と迷っていらっしゃるなら、まずはお話を聞かせてください。

ご家族のかたちはそれぞれですから、その方に合った形を、ご一緒に考えさせてください。

よくあるご質問
Q行方不明の相続人がいる場合、何から始めればいいですか?

A

まずは戸籍の附票を取り寄せて、現在の住所を確認するところから始めます。住所がわかれば、お手紙でご連絡を取ります。それでも所在がわからない、連絡が取れない場合は、家庭裁判所への申立て(不在者財産管理人の選任など)が必要になりますので、弁護士や司法書士にご相談ください。当事務所では、戸籍の附票の取得や、最初のご連絡のお手伝いができます。
Q不在者財産管理人の選任には、どれくらい費用と時間がかかりますか?

A

家庭裁判所への予納金として数十万円程度かかるのが一般的です(事案によって変動します)。申立てから選任まで数か月、その後、遺産分割協議の許可を取るのにさらに時間がかかります。申立て手続きは弁護士・司法書士の業務領域ですので、当事務所では信頼できる専門家をご紹介します。
Q失踪宣告と不在者財産管理人、どちらを選べばいいですか?

A

どちらを選ぶかは、行方不明になってからの期間や、ご家族の状況によって変わります。

不在者財産管理人:所在不明だが亡くなったとは言い切れない場合に。比較的早く手続きを進められます。
失踪宣告:7年以上生死不明の場合に。確定までに1年以上かかりますが、その後の手続きは進めやすくなります。

判断には専門的な検討が必要なので、弁護士・司法書士にご相談いただくのが安心です。

Q遺言があれば、行方不明者がいても手続きは進められますか?

A

はい、多くのケースで進められるようになります。遺言で「誰に何を渡すか」を決めておき、遺言執行者を指定しておけば、不動産の登記や預金の解約を遺言執行者が中心になって進められます。これが、遺言を残す大きなメリットの一つです。ただし、お子さんや親が行方不明の場合、遺留分への配慮が必要になります。
Q連絡が取れない兄弟がいる場合、相続させない遺言にできますか?

A

遺言を書いておけば、可能です。兄弟姉妹には遺留分(最低限の取り分)がないため、遺言で「全財産を配偶者に渡す」「特定の方に渡す」と書いておけば、その方々に財産を渡す内容にできます。ただし、お子さんや親が相続人の場合は遺留分があるため、別途配慮が必要です。
Q長年放置してしまっています。今からでも間に合いますか?

A

相続自体に時効はありませんので、何年経っていても手続きを進めることは可能です。ただし、放置している間にほかの相続人が亡くなって数次相続が発生していると、相続人の調査からやり直す必要があります。早めに動き始めるほど、関係者が少なくて済みます。「もう手遅れかも」と感じても、まずはご相談ください。

当事務所のサポート

当事務所では、三重県内・近隣県にお住まいの方を中心に、相続のご相談をお引き受けしています。「行方不明の方がいる」という難しいご相続でも、できることはたくさんあります。

📋 当事務所がワンストップでサポートできること
・戸籍・附票の取得(行方不明の方の住所追跡)
・お手紙の文案作成・内容証明郵便の準備
・遺言書の作成(津・四日市・伊勢・松阪・桑名等の公証役場と連携)
・遺言執行者の引き受け
・遺産分割協議書の作成

不在者財産管理人の選任や失踪宣告など、家庭裁判所での手続きが必要になった場合は、信頼できる弁護士・司法書士をご紹介し、連携してご家族の負担を最小限にします。窓口は当事務所にひとつ。ご家族はあちこちに相談に行く必要はありません。

🏛 行政書士(当事務所)
戸籍・附票の収集
遺言書作成・遺言執行
遺産分割協議書作成
⚖ 弁護士・司法書士(ご紹介)
不在者財産管理人選任申立
失踪宣告申立
不動産の相続登記
📊 税理士(ご紹介)
相続税の申告
準確定申告

三重県鈴鹿市の行政書士事務所

行方不明の相続人がいる場合のご相談を承っております

「うちの場合、どう進めればいい?」
その段階でのご相談で結構です。
ご状況を整理するだけでも、次の一歩が見えてきます。

対応エリア:三重県内・近隣県

初回相談無料・出張対応可

遺言書作成サポートの詳細を見る →無料相談のお問い合わせはこちら →LINEで無料相談する →

お電話・メール・LINEにて受付中

まとめ
手続き
停止
行方不明の相続人がいると、遺産分割協議が進められない
不在者財産管理人の選任には数か月+予納金数十万円程度
放置
危険
放置すると数次相続で相続人がさらに増えていく
2024年から相続登記義務化(3年以内・過料10万円以下)
遺言で
備える
遺言と遺言執行者で、行方不明者がいても手続きが進みやすくなる
兄弟姉妹なら遺留分なし。遺言で柔軟な対応が可能
専門家
連携
遺言は行政書士、裁判所手続きは弁護士・司法書士
役割分担で、ご家族の負担を最小限に

【免責事項】本記事は一般的な情報提供を目的としており、法的助言を提供するものではありません。個別の事情により手続きや結果が異なる場合がありますので、具体的なご相談は専門家にお問い合わせください。

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