はじめに
「もし親が認知症になったら、預金を引き出せなくなるって本当?」
「施設への入所手続き、誰がしてくれるの?」
——そんな不安を抱えながらも、何から動けばいいか分からないまま時間だけが過ぎていく。
そういうご家族からのご相談、とても多いんです。
実は、こうした不安の一部は、元気なうちに「任意後見契約」を結んでおくことで、備えることができます。難しそうな名前ですが、簡単に言うと「将来、自分で判断できなくなったときのために、信頼できる人に手続きをお願いしておく約束」のことです。
この記事では、任意後見契約の仕組みから費用・手続き・気をつけたい点まで、できるだけ分かりやすくお伝えします。
2026.06.14
はじめに
「親の終活、そろそろ何かしておかないと…」と思いながらも、何をすればいいのか調べるほどに言葉が増えていって——という方が、ご相談の中でも少なくありません。
「遺言書」「任意後見」「家族信託」「死後事務委任」。どれも...
📋 この記事でわかること
・任意後見契約とは何か(法定後見・成年後見との違い)
・任意後見契約の3つのタイプ
・手続きの流れと費用の目安
・あらかじめ確認しておきたいこと(3%問題と見守り契約の必要性)
・三重県で相談するには
任意後見契約とは
任意後見契約とは、判断能力がしっかりしているうちに、「将来、もし自分で物事を決められなくなったとき、この人に代わりに動いてもらう」と約束しておく制度です。
後見人になってもらう人(受任者)は、家族でも、親しい友人でも、行政書士・司法書士・弁護士などの専門家でも構いません。大切なのは、「まだ大丈夫」と思えているうちに動き出すことです。認知症が進んでしまうと、もうこの契約を結ぶことはできなくなります。
任意後見契約は必ず公正証書で作成する必要があります。口約束や普通の書面では効力がありません。契約後は法務局に登記されます。
成年後見(法定後見)との違い
「成年後見」という言葉は聞いたことがあっても、「任意後見」との違いはよく分からない——そういう方がほとんどだと思います。
一番のポイントは、後見人を誰が決めるかです。ここが全く違います。
後見人を決める人
本人が事前に選ぶ
家庭裁判所が選ぶ
使うタイミング
判断能力があるうちに契約し、低下後に発効
判断能力が低下してから申立て
後見人の選択肢
家族・友人・専門家など自由
裁判所が適任者を選定(希望が通らないことも)
本人の意思反映
契約内容で細かく指定できる
制度の枠内での対応になる
任意後見の一番のメリットは、「誰に、何をお願いするか」を自分で決めておけることです。法定後見では、家庭裁判所が後見人を選ぶため、まったく知らない専門家が担当になることも珍しくありません。「自分のことを知らない人に財産を管理されるのは…」と感じる方も多いのではないでしょうか。
任意後見契約の3つのタイプ
ひとくちに「任意後見契約」と言っても、実は3つのタイプがあります。現在の状況や、どんなリスクに備えたいかによって、どれが合うかが変わってきます。
① 将来型
今は元気だが、将来に備えて契約だけを結んでおくタイプ。判断能力が低下するまでは契約の効力は発生しません。最もシンプルで、比較的費用が抑えられます。
こんな方に:まだお元気で、将来の備えとして最初の一手を打ちたい方
② 移行型(最も多い)
任意後見契約と同時に「財産管理委任契約」も結んでおくタイプ。判断能力があるうちは財産管理契約で対応し、低下後に任意後見に移行します。空白期間なく継続的なサポートが受けられるため、実務では最もよく使われます。
こんな方に:今すぐ財産管理もお願いしたい方、体が動きにくくなってきた方
③ 即効型
契約と同時に任意後見監督人の選任を申し立て、すぐに効力を発生させるタイプ。すでに判断能力がやや低下している方が対象になりますが、契約時に判断能力があることが前提です。
注意:すでに判断能力が低下している場合は任意後見契約を結べません。法定後見の手続きが必要になります。
手続きの流れ
「手続きが複雑そう…」と思われるかもしれませんが、流れを整理するとシンプルです。大きく「契約を結ぶまで」と「実際に後見が始まってから」の2段階に分かれます。
①受任者を決める
後見人になってもらう人(受任者)を選ぶ。家族・知人・専門家いずれも可
②契約内容を決める
財産管理・身上監護の範囲、報酬の有無などを決める
③公証役場で公正証書作成
本人と受任者が揃って公証役場へ。2025年10月からリモート方式も可能に
④法務局に登記
公証人が法務局へ登記の嘱託を行う(本人の手続きは不要)
⑤判断能力が低下したら
本人・家族・受任者などが家庭裁判所へ「任意後見監督人選任の申立て」を行う
⑥任意後見スタート
家裁が任意後見監督人を選任し、受任者が正式に任意後見人として就任。財産管理・身上監護を開始
費用の目安
「費用がいくらかかるか分からなくて不安」というご相談もよくあります。任意後見の費用は、「契約するとき」と「後見が実際に始まってから」の2段階に分けて考えると整理しやすいです。
契約時にかかる費用
公証役場の手数料1万3,000円
法務局への登記嘱託料1,600円
収入印紙代2,600円
正本・謄本代(枚数により変動)数千円
公証役場まわりの合計:約2〜3万円。専門家に依頼する場合は別途報酬がかかります。
発効後に継続してかかる費用
任意後見が実際にスタートすると、家庭裁判所が選ぶ「任意後見監督人」(後見人をチェックする役割の人)への報酬が、毎月本人の財産から支払われます。金額は家庭裁判所が決定するため、こちらで調整することはできません。
管理財産が5,000万円以下の場合月額1〜2万円
管理財産が5,000万円超の場合月額2.5〜3万円
この費用は契約で変更できず、任意後見が終了するまで(本人が亡くなるまで)毎月かかり続けます。
あらかじめ確認しておきたいこと
任意後見は「自分で後見人を選べる」という点でとても優れた制度です。ただ、メリットがある一方で、事前に知っておいてほしい落とし穴もあります。「知らなかった」では済まないこともありますので、正直にお伝えします。※クリックすると記事が開きます。
⚠ 結んでも「使われない」ケースが多い(3%問題)
+
実はこれが、任意後見の大きな落とし穴のひとつです。累計で約12万件もの任意後見契約が結ばれているのに、実際に後見が始まったのは約3%にすぎません。
なぜそうなるかというと、「判断能力がどこまで下がったら申立てをすればいい?」のタイミングを、誰も把握できていないからです。契約はしたけれど、いざというときに動ける人がいない——そういうケースがとても多いんです。
だからこそ、見守り契約とセットで使うことが推奨されています。定期的に様子を確認する人がいれば、適切なタイミングで申立てができます。
2026.06.14
はじめに
「親が一人暮らしをしているけれど、毎日様子を確認できるわけじゃない」
「体が弱ってきて、銀行や役所の手続きが一人では難しくなってきた」
——そういうご相談が、増えています。
認知症になる前の、「元気だけど不安が...
⚠ 本人が悪徳商法に引っかかっても「取り消せない」
+
任意後見人には、「取消権」がありません。
たとえば、親御さんが訪問販売などで不要な契約をしてしまったとします。法定後見であれば、後見人がその契約を取り消すことができますが、任意後見人にはその権限がないため、取り消すことができません。
「詐欺や悪徳商法から守りたい」という目的が強い場合は、法定後見の方が適している場合もあります。どちらが合っているか、まずはご相談ください。
⚠ 発効後は監督人報酬が毎月発生する
+
任意後見が始まると、任意後見監督人への報酬が毎月本人の財産から支払われます。金額は月額1〜3万円程度ですが、家庭裁判所が決めるため交渉はできません。仮に月2万円・10年間続いた場合、総額240万円になります。「思ったより長くかかってしまった」とならないよう、発効のタイミングは慎重に考えたいところです。
⚠ 死後の手続きはカバーできない
+
任意後見契約は、本人がお亡くなりになった時点で終了します。葬儀の手配・各種サービスの解約・遺品整理といった「亡くなった後の実務」は、任意後見の対象外です。
「生前のことも、死後のことも、まとめて備えておきたい」という場合は、
死後事務委任契約も合わせて結んでおくのがおすすめです。
2026.06.14
はじめに
子どもはいない。兄弟とも長年疎遠になっている。
自分が死んだとき、葬儀を頼める人も、部屋を片付けてくれる人も、思い浮かばない——。
あるいは、子どもはいるけれど遠くに住んでいて、迷惑をかけたくない。
自分の葬儀...
⚠ 財産の「承継」はできない
+
「任意後見契約を結んでおけば、財産のことも安心」と思われがちですが、任意後見は財産を「管理する」ための制度で、「誰に渡すか」は決められません。
財産の承継については、別途
遺言書を準備しておく必要があります。任意後見+遺言書をセットで備えておくと、より安心できる場合が多いです。
2026.07.11
三重県鈴鹿市の行政書士事務所
あなたの想いを、遺言書に残しませんか?
ご意向のヒアリングから公証役場との手続きまで、行政書士が一括でサポートいたします。
無料相談のお問い合わせ→ LINEで無料相談する→
お電話で...
今、親御さんはお元気でいらっしゃるでしょうか。
一緒に過ごせる時間、笑って話せる時間
——その「今」があるうちに、できることがあります。
任意後見契約は、
親御さん自身が「この人に任せたい」と言える間にしか、結ぶことができません。
難しい話を切り出すのは、勇気がいることだと思います。
それでも、「もしものとき、あなたのそばにいられるように」
——そういう気持ちで動き出すことが、親御さんへの、一つの形の愛情だと思っています。
私がこの仕事をしているのは、人の夢や悩み、苦しんでいることに寄り添って、一緒に解決していきたいからです。法律の話をする前に、まずあなたの話を聞かせてください。
どんな小さなことでも、一緒に考えます。
行政書士髙橋 大輔
三重県で任意後見契約を相談するには
任意後見の受任者(後見人になる人)には、行政書士・司法書士・弁護士などの専門家のほか、信頼できる家族や知人もなることができます。誰に頼むかは、費用面だけでなく「長く信頼関係を続けられるか」が大切なポイントです。
当事務所では現時点で任意後見の受任は行っていませんが、「どこに相談すればいいか分からない」という段階からお話を伺っています。内容の整理や、信頼できる専門家へのご紹介は承っていますので、まずは気軽にお声がけください。
✓任意後見の仕組み・費用・流れを一緒に整理する
✓信頼できる司法書士・弁護士をご紹介する
✓任意後見と合わせた遺言書の作成・遺言執行をサポートする
✓「何から相談すればいいか分からない」という段階から話を聞く(初回無料)
🏛 行政書士(当事務所)
相談・専門家紹介
公正証書遺言の作成
遺言執行者の引き受け
※任意後見の受任はご相談ください
⚖ 司法書士・弁護士(ご紹介)
家族信託の設計
不動産の相続登記
任意後見の受任(司法書士)
よくあるご質問
Q. 任意後見人は誰でもなれますか?+
家族・親族・友人・行政書士・司法書士・弁護士・社会福祉士・NPO法人など、幅広い方がなることができます。ただし、未成年者や破産者、本人と訴訟関係にある人などは受任者にはなれません。法律上の条件よりも、「長く信頼関係を続けられるか」が実際には一番大切なポイントです。
Q. 認知症が少し始まっているのですが、まだ間に合いますか?+
判断能力がある程度残っていれば、契約できる場合があります。ただし、公証役場で公証人が本人の判断能力を確認するため、軽度の認知症でも「難しい」と判断されることがあります。「まだ大丈夫かな」と思っているうちに動き出すことが、やはり一番の安心につながります。気になる方は早めにご相談ください。
Q. 任意後見契約と家族信託はどう違いますか?+
よく比べられる二つですが、役割が違います。任意後見は、判断能力が低下した後の「生活全般・財産管理のサポート」を担う制度で、家庭裁判所の監督が入ります。家族信託は、特定の財産(自宅・収益不動産など)の「管理・承継」を目的とした契約で、裁判所は関与しません。どちらが合うかは財産の性質や家族の状況によって変わります。家族信託の設計は司法書士・弁護士の領域ですので、ご相談時に適切な専門家をご紹介します。
Q. 任意後見契約は途中で解除できますか?+
できます。後見が始まる前(任意後見監督人が選任される前)であれば、公証人の認証を受けた書面があれば自由に解除できます。後見が始まってからは、正当な理由がある場合に家庭裁判所の許可を得て解除する形になります。「一度結んだら取り消せない」わけではないので、まずは相談から始めてみてください。
Q. 遺言書と任意後見契約は、どちらを先に作ればよいですか?+
どちらが先でも問題ありません。ただ、役割が全く違う二つなので、できればどちらも備えておくのがおすすめです。任意後見は「生きている間の財産管理・生活のサポート」、遺言書は「亡くなった後に財産を誰に渡すか」を決めるもの。片方だけでは、どこかに空白が生まれてしまいます。当事務所では遺言書の作成から遺言執行まで一貫してサポートしていますので、合わせてご相談ください。
Q. 三重県・鈴鹿市で任意後見の相談はどこにすればよいですか?+
当事務所(行政書士髙橋大輔事務所・三重県鈴鹿市)では、任意後見の仕組みや費用のご説明、信頼できる司法書士・弁護士へのご紹介を承っています。「何から始めればいいか分からない」「家族にどう切り出せばいいか」という段階からでも、気軽にご相談ください。初回相談は無料です。
まとめ
何のため
判断能力が低下したときに備えて、後見人を自分で選んでおくための契約
法定後見との違い
後見人を本人が選べる・内容を自分で決められる(法定後見は裁判所が決定)
費用
契約時:公証役場まわりで約2〜3万円。発効後:任意後見監督人報酬が月額1〜3万円
注意点
3%しか使われていない現状。見守り契約とセットで、発効タイミングを見極める体制が必要
合わせて
遺言書(財産の承継)・死後事務委任(死後の手続き)とセットで備えるのが理想
【免責事項】本記事は一般的な情報提供を目的としており、法的助言を提供するものではありません。個別の事情により手続きや結果が異なる場合がありますので、具体的なご相談は専門家にお問い合わせください。記載内容は2026年6月時点の情報に基づきます。