はじめに

はじめに

「遺産分割協議って何をすればいいの?」「銀行や法務局から書類を求められたけど、何から始めればいいかわからない」——相続手続きを進めようとして、最初に壁にぶつかるのが遺産分割協議です。

遺産分割協議は相続人全員の合意がなければ成立しません

一人でも欠けると、預金の解約も不動産の名義変更も動かせません。

この記事では、協議の進め方・分割方法の種類・協議書の役割・よくある記載ミス・相続人に特殊事情がある場合の対処まで順番に解説します。

遺産分割協議とは

STEP 1遺産分割協議とは

遺産分割協議とは、相続人全員で財産の分け方を決める話し合いです(民法第907条第1項)。一人でも欠けた協議は法的に無効となります。

📋 遺産分割協議が必要なケース
遺言書がない場合
遺言書があっても、すべての財産について分け方が決まっていない場合
相続人全員の合意があれば、遺言と異なる内容の遺産分割協議を行うことも可能
⚠ 「遺言があれば協議不要」は誤解
遺言書がある場合でも、遺言で分け方が決まっていない財産がある場合や、相続人全員が合意する場合は協議を行うことができます。

遺産分割協議が不要なケース

STEP 2遺産分割協議が不要なケース

すべての相続で協議が必要なわけではありません。以下のケースは協議なしで手続きを進められます。

相続人が一人だけ
話し合う相手がいないため協議は不要。そのまま各種名義変更手続きに進めます。
遺言書ですべての財産の分け方が決まっている
遺言の内容に従って手続きを進めます。ただし遺言で触れていない財産がある場合は、その分だけ協議が必要です。
相続人全員が相続放棄した
相続放棄した方は最初から相続人でなかったことになるため、協議の対象外です。

進め方の流れ

STEP 3進め方の流れ
1
相続人の確定 戸籍収集により法定相続人を確定する
2
財産の把握(財産目録を作る)
📋 財産目録に載せるもの
預貯金 各金融機関に残高証明書を請求(口座の洗い出しが先)
不動産 登記事項証明書・固定資産税の課税明細書で確認
有価証券・株式 証券会社からの郵便物・通帳の記録で確認
生命保険 受取人が指定されていれば相続財産に含まれない場合あり
借金・ローン プラスの財産だけでなくマイナスも把握が必要
3
分け方の話し合い 相続人全員で協議(誰が・何を・どの割合で相続するか)
4
遺産分割協議書の作成 相続人全員が署名・実印で押印

遺産の分割方法は4種類

STEP 4遺産の分割方法は4種類

遺産分割協議では、財産をどのように分けるかの方法を決める必要があります。主に4つの方法があり、財産の種類や相続人の状況によって向き不向きがあります。

① 現物分割
財産をそのままの形で分ける方法。「不動産はAが、預金はBが相続する」といった形。
→ 財産の種類が複数ある場合に向いている
② 換価分割
財産を売却して現金にしてから分ける方法。
→ 誰も住まない実家・空き家がある場合に向いている
③ 代償分割
一人が不動産などを取得し、他の相続人に現金で差額を払う方法。
→ 不動産しかない場合・農地・家業の相続に多い
④ 共有分割
複数の相続人が共有名義で持つ方法。後から売却・活用する際に全員の合意が必要になる。
→ 原則として避けた方がよい(将来のトラブルの原因に)

遺産分割協議書の役割・使用場面・書くべき内容

STEP 5遺産分割協議書の役割・使用場面・書くべき内容

遺産分割協議書とは、「誰が・何を・どれだけ相続するか」を相続人全員で合意した内容を書面にしたものです。口頭での合意だけでは銀行・法務局・運輸支局などの手続きに使えません。相続人全員の自署・実印での押印と、印鑑証明書の添付が必要です。

📋 協議書の主な使用場面
金融機関の払戻し・口座解約
不動産の相続登記(司法書士業務・2024年4月より義務化)
車の名義変更(運輸支局)
証券・株式の名義変更

遺産分割協議書に決まった書式はありませんが、以下の内容は必ず記載が必要です。

📄 協議書の基本構成
被相続人の情報
氏名・生年月日・死亡年月日・最後の本籍地・最後の住所
各財産の記載
不動産は登記簿通りの地番・家屋番号で記載。預金は銀行名・支店名・口座番号(残高は書かない)
誰が何を取得するか
相続人の氏名と取得する財産を明確に対応させて記載
後日判明財産の扱い
「本協議書に記載なき財産は〇〇が取得する」の一文を必ず入れる
署名・押印
相続人全員が自署(自分で書く)+実印で押印。印鑑証明書を添付
📄 記載例を見る(クリックで開く)
遺 産 分 割 協 議 書
 被相続人 〇〇 〇〇(令和〇年〇月〇日死亡)の遺産について、下記相続人全員で協議した結果、次のとおり分割することに合意した。
第1条 不動産
相続人 〇〇 〇〇は、次の不動産を取得する。
土 地
所 在 〇〇市〇〇町〇丁目
地 番 〇〇番〇〇
地 目 宅地
地 積 〇〇〇.〇〇平方メートル
建 物
所 在 〇〇市〇〇町〇丁目〇〇番地〇
家屋番号 〇〇番〇〇
種 類 居宅
構 造 木造瓦葺2階建
床面積 1階 〇〇.〇〇平方メートル 2階 〇〇.〇〇平方メートル
第2条 預貯金
相続人 〇〇 〇〇は、次の預貯金を取得する。
〇〇銀行 〇〇支店 普通預金 口座番号 〇〇〇〇〇〇〇
第3条 その他の財産・後日判明財産
本協議書に記載のない遺産および後日判明した遺産については、相続人 〇〇 〇〇が取得する。
以上のとおり、相続人全員による遺産分割協議が成立したので、これを証するため本書を〇通作成し、各自1通を保管する。
令和 〇 年 〇 月 〇 日
相続人(住所)〇〇市〇〇町〇丁目〇番〇号
    (氏名)〇〇 〇〇  ㊞
相続人(住所)〇〇市〇〇町〇丁目〇番〇号
    (氏名)〇〇 〇〇  ㊞
【注意】この記載例は一般的な参考用です。不動産の表記は登記事項証明書の記載と完全に一致させる必要があります。財産の種類・相続人の構成・分割方法によって記載内容が異なります。

話し合いで揉めやすいポイント

STEP 6話し合いで揉めやすいポイント

遺産分割協議で意見が対立しやすいのは、「介護した」「生前にもらっていた」という主張が絡むケースです。

寄与分
「親の介護を自分だけがずっとしてきた」など、被相続人の財産維持・増加に貢献した相続人は、その分を多く相続できる可能性があります(民法第904条の2)。ただし客観的な証明が難しく、感情的な対立になりやすいです。
特別受益
「あの人だけ生前に多くもらっていた」という場合、その分を相続財産に持ち戻して計算する制度です(民法第903条)。学費・住宅購入資金・結婚費用などが対象になることがあります。

協議書の記載ミス

STEP 7協議書の記載ミス

遺産分割協議書を自分で作成することは可能ですが、記載に不備があると銀行・法務局に受け付けてもらえず、作り直しになることがあります。

⚠ よくある記載ミス(行政書士が実務でよく見るケース)
不動産の表記が登記簿と一致していない(住居表示と地番は別物)
預金口座の残高を記載してしまった(利息で金額が変わるため口座番号のみ記載が原則)
後から判明した財産の記載がない(「本協議書に記載なき財産は〇〇が取得する」の一文が必要)
全員分の署名・実印の押印漏れ(一人でも欠けると無効)

税理士が必要なタイミング

STEP 8税理士が必要なタイミング

遺産分割の方法は「誰が何をもらうか」だけでなく、相続税の金額にも大きく影響します。分割方法を決めてしまった後では節税の選択肢が狭まるため、相続税が発生しそうな場合は協議の前に税理士に相談しておくことが重要です。

📋 こんな場合は税理士に相談を
相続財産の合計が基礎控除(3,000万円+600万円×相続人数)を超える可能性がある
不動産が複数あり、小規模宅地等の特例を使えるか判断したい
分割方法によって相続税額が変わる可能性がある(特に不動産がある場合)
⚠ 分割方法を決めてから相談しても遅い場合がある
「長男が不動産を全部もらう」と決めた後に税理士に相談したら、「小規模宅地等の特例が使えなかった」というケースが実際にあります。相続税が心配な場合は協議書を作成する前に税理士に確認することをおすすめします。当事務所から提携税理士をご紹介できます。

相続人に特殊事情がある場合

STEP 9相続人に特殊事情がある場合

相続人の中に次のような特殊事情がある場合、そのまま協議を進めることができません。早めに確認が必要です。

認知症の
相続人がいる
判断能力がない状態では遺産分割協議に参加できません。家庭裁判所に成年後見人の選任を申立て、成年後見人が代理で協議に参加することになります。ただし成年後見人は本人の利益を守る立場のため、必ずしも他の相続人の希望通りにはなりません。
未成年の
相続人がいる
未成年者は単独で協議に参加できません。通常は親権者が代理しますが、親権者も相続人の場合は利益相反になるため、家庭裁判所に特別代理人の選任を申立てる必要があります(民法第826条)。
行方不明の
相続人がいる
連絡が取れない相続人がいても、勝手に協議を進めることはできません。家庭裁判所に不在者財産管理人の選任を申立て、管理人が代理で協議に参加する方法があります(民法第25条)。長期不在の場合は失踪宣告の申立ても検討できます。
⚠ 特殊事情がある場合は早めに専門家へ
成年後見人・特別代理人・不在者財産管理人の選任申立てはいずれも家庭裁判所への申立てが必要で、数か月かかる場合もあります。相続税申告の10か月の期限に間に合わない可能性もあるため、早めに司法書士または弁護士にご相談ください。

協議がまとまらない場合

STEP 10協議がまとまらない場合

話し合いがまとまらない場合は次の手順で対応します。

遺産分割調停(家庭裁判所) 調停委員が中立的に間に入り話し合いを進める
遺産分割審判(民法第907条第2項) 調停不成立の場合は審判に移行し裁判官が決定

当事務所でできること・専門家の役割分担

当事務所でできること・専門家の役割分担

「協議書を自分で作ったら差し戻された」「何から始めればいいかわからない」という状況ではありませんか?

協議書を作ったが、銀行・法務局に受け付けてもらえなかった
相続人が多く、全員の署名・押印を集めるやり取りで止まっている
仕事が忙しく、手続きに時間を割けないので誰かに任せたい

遺産分割協議書の作成・戸籍収集・財産目録の整理は行政書士がサポートできます。

🏛 行政書士(当事務所)
遺産分割協議書の作成
相続関係説明図の作成
各種相続書類の収集・整理
遺言書作成のサポート
⚖ 司法書士(ご紹介)
不動産の相続登記
(2024年4月より義務化)
特別代理人・成年後見の申立
📊 税理士(ご紹介)
相続税の申告・納税手続き
準確定申告

三重県鈴鹿市の行政書士事務所

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まとめ

まとめ
全員
合意
相続人全員の参加・合意が必要(一人でも欠けると無効)
民法第907条第1項|遺言書があっても協議が必要なケースあり
分割
方法
現物・換価・代償・共有の4種類
共有分割は将来のトラブルになりやすいため原則避ける
記載
ミス
不動産の地番ミス・残高記載・後日判明財産の漏れに注意
不備があると銀行・法務局に受け付けてもらえず作り直しになる
特殊
事情
認知症・未成年・行方不明の相続人がいる場合は要注意
成年後見人・特別代理人・不在者財産管理人の選任が必要→早めに専門家へ
対立
調停→審判(弁護士への依頼が必要)
寄与分・特別受益の主張が出たら早めに弁護士へ
【免責事項】本記事は一般的な情報提供を目的としており、法的助言を提供するものではありません。個別の事情により手続きや結果が異なる場合がありますので、具体的なご相談は専門家にお問い合わせください。

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