はじめに

「成年後見制度が変わるってニュースで見たけど、うちに関係あるの?」
「母が認知症で、父の相続をどう進めたらいいか困っている…」

そんな声を、相談の場でよくお聞きします。

成年後見制度は、これまで「一度始めたら、やめられない」と言われてきました。そのため、相続の場面で必要だとわかっていても、利用をためらうご家族が少なくありませんでした。

その制度が、2026年6月の法改正で大きく変わります。この記事では、何がどう変わるのか、そして「改正を待つべきか、今動くべきか」を、相続手続きをお手伝いしている行政書士の目線で、できるだけやさしく解説します。

📌 3分でわかる、この記事の要点

・法律は2026年6月に成立。実際に新しい制度が始まるのは遅くとも2028年12月ごろです

・「後見・保佐・補助」の3種類が「補助」の1種類にまとまります

・必要がなくなれば、途中で終われる制度になります

・本人の希望がより大切にされ、支援する人の交代もしやすくなります

・ただし新制度が始まるまでは、今の制度のまま。相続が起きている方は、待たずに進める必要があります

そもそも成年後見制度とは?なぜ改正されるの?

そもそも成年後見制度って?なぜ変わるの?

成年後見制度は、認知症や障がいなどで判断する力が弱くなった方のために、家庭裁判所が選んだ人がお金の管理や契約を代わりに行ったり、手伝ったりする仕組みです。

たとえば、認知症のお母さまが相続人になった場合。お母さまはご自身で遺産の分け方を話し合う(遺産分割協議)ことが難しいため、代わりの人を立てる必要があります。そこで使われるのが成年後見制度です。

ところが、今の制度にはこんな「使いにくさ」がありました。

・遺産分割のために始めても、終わったあとも一生続く
・弁護士や司法書士が後見人になると、報酬の支払いもずっと続く
・後見人とうまくいかなくても、不正がない限り交代してもらうのが難しい

報酬は、たとえば東京家庭裁判所の目安では、管理する預貯金などが1,000万円以下で月2万円程度とされています。仮にこの金額で10年続けば、それだけで200万円を超える計算になります(報酬額は地域の家庭裁判所や事案によって異なります)。

「必要なのは遺産分割の1回だけなのに…」。こうした課題を受けて、2000年に制度が始まって以来の大きな見直しが行われることになりました。

成年後見制度の改正はいつから?

改正はいつから?

法律はすでに決まっていますが、新しい制度が実際に始まるのはもう少し先です。

2026年6月17日
国会で法律が成立
2026年6月24日
公布(法律が国民に知らされる)
遅くとも2028年12月ごろ
施行(新しい制度がスタート)
※公布から2年6か月以内に政令で決まります。2026年10月時点で日付は未定です
📝 ことばの解説
公布(こうふ):成立した法律を官報で国民に知らせること。
施行(しこう):法律の効力が実際に始まること。公布されても、施行日まではルールは変わりません。
政令(せいれい):法律の細かい部分を内閣が決めるルールのこと。
⚠ 「改正まで待とう」はちょっと待って

施行までは今の制度のままです。すでに相続が起きている場合、相続税の申告(申告が必要な場合、亡くなったことを知った日の翌日から10か月以内)や、不動産の相続登記(相続で不動産を取得したことを知った日から3年以内の義務)などの期限は待ってくれません。いつ始まるか決まっていない新制度を待っていると、こうした期限に間に合わなくなるおそれがあります。

成年後見制度の改正で何が変わる?主な5つの変更点

何が変わる?ひと目でわかる比較表

まずは、今の制度と改正後の違いを表で見てみましょう。

項目
今の制度
改正後
種類
後見・保佐・補助の3種類
「補助」に一本化
任せる範囲
種類ごとに決まっている(後見は財産全般)
必要なことだけ個別に決める
やめられるか
判断能力が回復しない限り、原則やめられない
必要がなくなれば終了できる
本人の希望
選任で考える事情の最後に記載
最初に考える事情に
支援者の交代
横領などの不正がないと難しい
本人のために特に必要なら交代できる

ここからは、ひとつずつ見ていきましょう。

変更点1 後見・保佐を廃止し「補助」に一本化

変更点13つの種類が「補助」ひとつに

今は、判断能力がどのくらい低下しているかで「後見」「保佐」「補助」のどれを使うかが決まります。特に「後見」になると、支援する人が財産全般を管理することになり、本人ができることまで任せてしまうという問題がありました。

改正後は「補助」にまとまり、「この手続きだけ手伝ってほしい」という必要な部分だけを決めて使う、いわばオーダーメイドの形になります。

📝 ことばの解説
代理権(だいりけん):本人に代わって手続きや契約をする権限。
同意権(どういけん):本人が行う契約などに「いいですよ」と同意する権限。同意がないまま本人がした契約は、あとから取り消せます。
補助を始めるには、原則として本人の同意が必要です。

変更点2 判断能力を欠く方のための「特定補助」(特定補助人)

変更点2新しくできる「特定補助」と「特定補助人」

では、認知症が進んで、ほとんど判断ができない方はどうなるのでしょうか。そのために新しく用意されるのが「特定補助」で、支援する人を「特定補助人」と呼びます。今の「後見」に近い状態の方を支える仕組みです。

📋 特定補助のポイント
・判断する力をほとんど欠く状態が続いている方が対象
・法律で定められた重要な財産上の行為を本人がしてしまった場合、特定補助人が取り消せる
・利用するには、原則として医師2人以上の意見を聞く必要がある

変更点3 必要がなくなれば終われる成年後見へ(終身制の見直し)

変更点3必要がなくなれば「終われる」

今回の改正の中でも、特に注目されている変化です。

今は、判断能力が回復しない限りやめられないため、事実上「一生続く制度」でした。改正後は、判断能力が回復していなくても「もう制度を使う必要がない」と家庭裁判所が認めれば、終了できます。

終了は、家族などが申し立てるほか、支援する人が年1回家庭裁判所に出す本人の状況報告をきっかけに、裁判所の判断(職権)で終わることもあるとされています。

変更点4 本人の意見の重視と支援者の交代

変更点4本人の気持ちを大切に、交代もしやすく

支援する人を選ぶとき、家庭裁判所が考える事情のいちばん最初に「本人の意見」が置かれます。支援する人には、本人に話を聴いて希望をくみ取る義務があることも、はっきり書かれます。

また、「本人と全然会ってくれない」など、不正はなくても本人のためにならないときは、支援する人を交代してもらえるようになります。

変更点5 任意後見が使いやすく

変更点5「任意後見」も使いやすく

任意後見とは、元気なうちに「将来、判断が難しくなったらこの人に頼む」と、自分で支援者と内容を決めておく契約です。こちらも使いやすくなります。

・家庭裁判所が「監督の必要がない」と明らかに認めた場合は、チェック役(任意後見監督人)を置かず、家庭裁判所が直接見守る形も可能に
・補助を使い始めても、任意後見の契約を続けられるように
・本人が公正証書で指定した人(親族以外でもOK)が、任意後見のスタートを申し立てられるように

このほか、報酬を決めるときに「実際にどんな仕事をしたか」を考慮することが明確になり、本人が亡くなった後の事務について支援者の権限を広げる見直しも含まれています。

成年後見制度の改正で相続はどう変わる?認知症の家族がいる遺産分割

相続はどう変わる?よくあるケースで比べてみます
💬 よくあるケース(説明のための例です)

父が亡くなり、相続人は母と長男・長女の3人。母は認知症で、遺産の分け方を話し合うのが難しい状態。遺産は実家と預金。

今の制度だと

母に成年後見人をつけて遺産分割。
でも遺産分割が終わっても後見は続き、母の財産全体を後見人が管理。専門職が選ばれれば報酬もずっと続きます。

改正後だと

「遺産分割」など必要なことに絞って補助を利用。
終わって必要がなくなったと家庭裁判所が認めれば、終了できる可能性があります。

⚠ 「遺産分割が終われば必ず終わる」わけではありません

終われるかどうかは、家庭裁判所が「もう必要ない」と認めるかどうかで決まります。お母さまの預金管理や施設の契約などで引き続き支援が必要なら、利用が続くこともあります。細かな運用は、施行に向けてこれから示される見込みです。

成年後見制度の改正を待つべき?今動くべき?状況別の判断

改正を待つ?今動く?状況別の考え方

ご相談でいちばん多いのがこの質問です。ご家族の状況ごとに整理してみました。

すでに相続が起きていて、相続人に認知症の方がいる
→ 待たずに、今の制度で進めることを検討
相続税や相続登記には期限があります。まずは遺産の内容と、遺産分割協議が必要かどうかを確認しましょう。
親は元気。でも将来の認知症が心配
→ 今のうちに遺言書と任意後見を
遺言ですべての財産の分け方を決めておけば、相続人に認知症の方がいても遺産分割協議をせずに手続きを進められる場合があります。制度改正の前でも後でも役立つ、有効な備えのひとつです。
すでに家族が成年後見を使っている
→ 今すぐ何かをする必要はありません
法務省の資料では、施行後に新しい補助へ移る申立てや、終了を求める申立てができると整理されています。具体的な手続きは今後示される見込みです。

成年後見制度の改正についてよくある質問

よくある質問
Q. 今の後見人は、改正されたら自動的にいなくなりますか?
A. 法務省の資料では、施行後に新しい補助へ移る申立てや、終了(開始の審判の取消し)の申立てをする形が示されており、施行と同時に自動的に終わる仕組みにはなっていないと考えられます。取消しを申し立てられるのは本人・配偶者・4親等内の親族などです。具体的な手続きは今後示される見込みです。
Q. 家族が支援者(補助人)になれますか?
A. 今と同じく、誰を選ぶかは家庭裁判所が決めます。改正後は「本人の意見」が選任で考える事情の最初に置かれますが、家族の希望どおりに選ばれるとは限りません。
Q. 費用(報酬)は安くなりますか?
A. 報酬の決め方として「実際にした仕事の内容」を考えることが明確になり、報酬の実績を公表する予定も示されています。また、必要な期間だけ使えるようになれば、トータルの負担が抑えられる可能性があります。ただし具体的な金額の基準はまだ示されていません。
Q. 今、任意後見の契約を結んでも大丈夫ですか?
A. 法務省の資料では、施行前に結んだ任意後見契約にも改正後のルールが適用される(それまでに生じた効力は維持)と整理されています。改正を待たずに準備を進めても問題ないと考えられます。契約内容はご家族の状況に合わせて検討しましょう。

当事務所でできること

当事務所でできること

こんなお悩みはありませんか?

・相続人に認知症の家族がいて、何から手をつければいいかわからない
・親が元気なうちに、遺言書や任意後見の準備をしておきたい
・改正を待つべきか、今動くべきか、うちの場合を相談したい

当事務所では、遺言書の作成サポート、任意後見契約・死後事務委任契約の準備、戸籍収集や遺産分割協議書の作成などの相続手続きをお手伝いしています。成年後見の申立てや相続登記は司法書士・弁護士、相続税の申告は税理士と連携して対応します。「まだ何も決まっていないけど話を聞いてみたい」という段階でも大丈夫です。三重県鈴鹿市を拠点に、三重県全域に対応しています。

三重県鈴鹿市の行政書士事務所

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まとめ

まとめ
時期
2026年6月成立、遅くとも2028年12月ごろスタート
それまでは今の制度のまま
変更
「補助」に一本化、必要なことだけ・必要な間だけ使える制度へ
特定補助の新設、本人の意見の重視、交代のしやすさ、任意後見の改善も
備え
相続が起きているなら待たない。元気なうちなら遺言と任意後見
どちらも「改正の前でも後でも」役立つ準備です
【参考】
法務省「民法等の一部を改正する法律(成年後見及び遺言の制度の見直し)について」・同「民法等改正法の概要」
https://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00410.html
東京家庭裁判所「成年後見人等の報酬額のめやす」
【免責事項】
本記事は2026年10月時点で公表されている情報をもとにした一般的な情報提供であり、法的助言を提供するものではありません。施行日や運用の詳細は今後の政令等で定められます。個別の事情については専門家にご相談ください。

 


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